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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】


土方さんの視線が、私の手の中にある錦絵と注がれる。

「俺に殺された瞬間、あの人はこの絵と同じ表情を浮かべてた」
「……え?」

私はまた、錦絵へと視線を落とす。
安らいだ芹沢さんの表情は、とても殺される瞬間の物には見えなかった。

「……思えば、俺が最初に受け取ったのは、あの人から託された荷物だったのかもしれねえな。新選組を中途半端に終わらせちまったら、あの世で、芹沢さんに何を言われるかわからねえ。ずっと、そう思って走り続けてきたような気がするぜ」
「……土方さん」

近藤さんとは別の形ではあるけれども、きっと芹沢さんも土方さんにとってはとても大きな存在だったのだろう。
どんな人なのか本当に分からないけれども、私は少しだけ芹沢さんという方に会ってみたかったと思った。

「……どういう巡り合わせかはわからねえが、昨夜、芹沢さんの夢を見たんだ」
「……どんな夢でしたか?」
「言葉は、ろくに変わせなかった。だが夢の中のあの人は、この絵みてえな安らいだ顔をしててな……」

土方さんは懐かしそうな、なんとも言えないような表情になる。

「……あの人の顔を見た瞬間、こう言われた気がしたんだ。そろそろ背中の荷物を下ろしても構わねえぞ、って」
「背中の、荷物……」

相馬君が持ってきたこの錦絵、そして土方さんが見た夢。
ただの偶然のようにはどうしても思えなかった、私はなんとも言えない心情で錦絵を見る。

今後起きる出来事を暗示しているのだろうか。
そう思いながらも、私は未だに錦絵から目をそらすことが出来なかった。


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ー明治二年・五月ー

二股口から箱館に戻った土方さんは、弁天台場を訪れていた。
弁天台場とは、海に埋め立てて作った要塞らしく、元々は海外船の襲来き備えて幕府が設置していた砲台らしい。

そして土方さんが今日、こうしてこの場に足を運んだ理由は……。

「お久しぶりです、土方局長!」
「よう、調子はどうだ?」
「変わりありません。いつ新政府軍が来ても、返り討ちにしてやりますよ!」
「島田さん、相馬君、それに千鶴。ご無事で良かった……」

弁天台場には、島田さんと相馬君と千鶴がいた。
今日ここに来た理由は、彼らに会う為であり、私は千鶴と抱き合っていた。
すると土方さんは私の言葉を聞いて、心外と言わんばかりの表情を浮かべる。
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