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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】


あそこにいる彼らは、新選組が掲げる旗の下に集まった人々。
新選組が理想としているものに、自らの志として胸に抱いている。

今いる二股口は、新政府軍の進軍を防いでいる最前線。
敵の兵力が増したり、こちら側の弾薬が切れたらそれでお終い。
だけど誰一人とも、土方さんを疑うことも無く彼の指示に従ってくれていた。

「彼らに、土方さんのお気持ちは、ちゃんと伝わっていると思いますよ」
「……ありがとうよ。おまえはいつも、俺が欲しい言葉をくれるんだな」

彼の微笑みはとても優しかった。
その微笑みつい、私は見惚れてしまい、慌てて顔を逸らしてしまう。
見続けていたら、顔が赤くなってしまいそうだから。

(でも、私の言葉で土方さんを支えれるのなら、いくらでも言葉にしたい……)

少しだけ私も微笑みながら、そう思った。


そして、毎晩の冷え込みも少しつづ緩くなり始めた四月末。
松前口を守っていた大鳥さんの部隊が、破られたのだった。

土方さんの部隊も二股口の防衛を切り上げて、五稜郭まで撤退するように命令を受け、決戦の地は箱館となった。
事態は、土方さんの予想通りとなったのだ。

そんなある夜。
土方さんは、部屋にいる私に声をかけてきた。

「おまえ、いつまで起きてるつもりだ?そろそろ休んだ方がいいんじゃねえか」
「……それは、分かっていますが」

寝た方がいいのは分かっている。
でも、あと何度こうして土方さんた共に過ごせるか分からなくて、こうしてこの部屋から離れることが出来なかった。
そう思っていた時……。

「土方さん、いらっしゃいますか?相馬です」
「おう、どうした?」

土方さんが声をかけると、相馬君が部屋の中へと入ってくる。

「夜分遅くに、申し訳ありません。ですが。どうしても土方さんにお渡ししたい物があって……」
「渡したい物だと?一体何だ」
「……これを」

相馬君が差し出したのは、一枚の錦絵。
そへを受け取った土方さんは、食い入るような眼差しでその絵を見つめる。

「こいつは……、井吹が描いた物か?どうしてこれを、俺に?」
「俺、前に江戸に戻った時、あいつに会って……その時、言ったんです。井吹の想いを……見てきたものを、皆に伝えてくれって」

相馬君の言葉に、私は江戸で沖田さんに会いに行った時のことを思い出した。
あの時、相馬君は井吹さんと話している姿を見た。
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