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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】


そして、土方さんは二股口の部隊を指揮している。
私も土方さんの部隊に同行して、二股口にて待機する事になった。

あの大雪の季節は終わり、雪も溶けてはいる。
だけどまだまだ肌を刺すような寒さは続いていた。
特に夜の冷え込みは、京とは比べ物にならない。

(手、かじかんでくる……)

ずっと野外で待機をしていれば、手はかじかんで身体を震え始めてしまう。
ここに来てそろそろ経つけれども、寒さになれなかった。

そして、四月の下旬を迎えた夜。
土方さんは何故か酒樽を持ってきたのであった。

「ここが正念場だ。気張ってくれよ。休みらしい休みも取れねえが、酒の一杯ぐらいは呑ませてやるからよ」
「あ……、ありがとうございます!」

土方さんは、兵士の方々の一人一人に声をかけて微笑みながらお酒を振る舞う。
陸軍奉行並が、手ずからお酒を注ぐということに、兵士の方々は恐縮していた。

「もっと呑ませてやりてえんだが、いつ戦が始まるかもわからねえしな。敵が攻め込んできたときに、酔っ払っちまってたら笑い話にもならねえ」

彼の口調は、まるで子供をさとすかのようだった。

「だから、今は一杯だけで我慢してくれ。戦いが終われば浴びるほど呑ませてやるからよ」
「我慢なんて、とんでもないです!」
「また酒にありつく為にも、全力を尽くします!」

多くの兵の方々に慕われる彼の姿は、なんだからありし日の近藤さんのようだ。
懐かしく思えながらも、私はお酒を振る舞う土方さんの姿を見守った。

そして、守備を続ける兵の方々から離れた私と土方さんは森を歩いていた。

「あの、土方さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫って、何がだ?」
「それは……えっと」

特に何が大丈夫なのかと、考えると言葉が詰まる。
ただ、妙な胸騒ぎがあってつい口にしてしまって、どうしようと悩む。
そして、ある事を思いつて私は慌てて言葉にした。

「ほ、ほら!土方さんお酒飲まれていたので、酔ってないかなと」
「……そんなこと心配してたのか?大丈夫だ、俺も一杯しか呑んでねえよ」
「……でも、ほら、土方さんお酒弱いから」
「弱くねえよ」

そう言いながら、土方さんはとても優しい眼差しで兵の方々の方を振り返った。

「あいつらは、俺の息子みてえなもんだ。俺にできることは、残り少ねえ。せめて、酒ぐらい振る舞ってやりてえだろ」
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