第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
それに、遠い地で土方さんの訃報なんて聞きたくない。
それだったら私も、この地で土方さんと共に死んでしまう方がいい。
「もう、私を置き去りにしたり突き放さないでください。貴方のお傍に居たいんです……お手元に置いてください」
彼と離れていた三ヶ月、私はずっと苦しかった。
辛くて泣いて、息をすることさえ辛く感じる日々だったのを思い出す。
あんな思いをしたくないのだ。
「絶対に離れませんからね……何があっても」
「そう言うとだろうとは思った。……本当に物好きな奴だな、おまえは」
土方さんは私の言葉に苦笑を浮かべる。
諦めに近いため息を吐き出しながらも、彼は私の気持ちを受け入れてくれた。
だけど土方さんの瞳は少しだけ複雑そうに揺れている。
「心配、してくださっているんですね。私のことを」
「……当たり前だ」
「じゃあ、私から目を離さないでください。土方さんが、私を守ってください」
そんなに私の言葉が以外だったのか、土方さんは目を見張った。
私の言葉はそんなに以外だったのだろうかと思い、少しだけ苦笑してしまう。
「……生きてください、土方さん。私を守り抜く為にも……絶対に」
「安心しろ。……惚れた女を先に死なせる気はねえよ」
「………へ?」
私は、土方さんの言葉に目を見張る。
今彼は、私のことを『惚れた女』と言ったのだ。
微かに、微かにだけど彼が私に少しだけ好意を向けてはくれているのかなとは思っていた。
でも実際にこうして言われるのは初めてで、驚いてしまう。
もしかして、私の聞き間違いなのだろうか。
そう思いながら、私は徐々に赤くなっていく顔を隠すために土方さんに背を向ける。
「おい。どうした?随分、顔が赤いが」
「な、何でもありません!!」
「……何でも、ない気がするけどな」
背後でくすりと笑う声が聞こえた。
そんな彼の方を見れずに、私はただ赤くなった顔を抑える。
(……あ、でも守るとは言ってもらえなかった。でも、少しだけは生に向いたのならそれで、充分かもしれない)
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暦が、四月になった頃。
新政府軍は、この蝦夷を目指して集結しているらしい。
土方さんが予想していた通り、乙部から上陸して今は松前口と二股口に兵を進めているとのこと。
松前口には、大鳥さんが率いる部隊が詰めていると聞いた。