第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
部屋に入れば、土方さんと相馬君がこちらへと視線を向けてくる。
話し合いをしていると言っていたけれど、もしかして新政府軍についてなのだろうかと考えながらも土方さんの前に湯呑みを置いた。
「それで、土方さん。本当に風間千景は雪村先輩たちをもう狙っていないのですか?」
【風間千景】という名前に、私と千鶴の身体が僅かに跳ねた。
そして千鶴は不安げに顔を歪めながら、相馬君の方へと視線を向ける。
私達を付け狙い、何度も目の前に立ちはだかった男。
そして井上さんの命を奪い、土方さんの命までを狙っている男の名前に私は眉間に皺を寄せた。
「ああ。風間は、千尋と雪村姉じゃなくて俺を狙っているからな。頬に傷を付けられた事を相当根に持ってやがる……そのうち、俺を殺すためにここに来るはずだ」
土方さんは苦笑いを浮かべながら、相馬君にそう伝えた。
「では、もう雪村先輩たちが狙われることはない……」
「ああ」
「そうですか……それは、良かった」
相馬君は安堵すると小さく息を吐く。
だけど直ぐに目を見張ってから土方さんを見る。
「ですが、土方陸軍奉行並が危険なのでは!?」
「俺が、そう簡単にあの鬼に殺られると思ってんのか?」
「……いえ。ただ、風間千景はとてつもなく強いので」
「あんな奴に殺られるつもりはねえよ。それに、殺されそうになったら叱られるだろうからな」
喉を鳴らしながら笑った土方さんは、私の方へと視線を向けてくる。
そんな土方さんに私は眉を寄せながら、当たり前ですと言わんばかりに頷いた。
「当たり前です。もし生きるのを諦めようとしたら、絶対に許しませんから」
「な?怖い女だよ、全く」
「雪村先輩はお強い人ですね」
「言っておくけど、私も相馬君が生きるの諦めたら許さないからね」
それまで静かに話を聞いていた千鶴は、眉を寄せながら相馬君にそう言い放つと、相馬君は目を見張って驚いた顔をしていた。
暫く、目を見張ってはいたけれど直ぐに相馬君は真面目な表情に変わると千鶴を真っ直ぐに見る。
「勿論です。貴方を置いて死のうとは思いません」
「……良かった」
「千鶴さんを、悲しませたりしません。絶対に」
なんだか、急に甘い雰囲気になった気がする。
見つめ合っている二人からは、砂糖菓子のような甘い雰囲気が漂っている気がした。