第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
「どうした?俺の顔に何か付いてるか」
「え?あ……いえ。土方さんって、何時から【鬼】と呼ばれるようになったのかなと思いまして」
私の言葉に土方さんはなんとも言えない表情になる。
もしかして、言いたくない内容なのかなと思い慌てて私は言葉を付け加えた。
「あ、話したくなければ無理にはお聞きしませんが……」
「……そのうち、話すきっかけができたら聞かせてやるさ。そう面白い話でもねえがな」
「じゃあ、楽しみにしています。土方さんのお話が聞けるのを」
彼の事ならば何でも知りたい。
そう思った私は、彼へと微笑んでみせれば土方さんは不意を突かれたように目を見張った。
「……おまえぐらいだぞ。俺の話を聞きてえと楽しみにするのは」
「そうですか?私、土方さんの事なら知りたいですよ」
尚更、好きな人の話なら。
そう思っていると、土方さんは呆れたように微笑みながらも私の頬へと手を伸ばしてくる。
少しだけ冷えている手は、私の頬を優しく撫でた。
大きくて、骨ばっていて、刀や木刀を握っていたせいなのかタコが出来ている手。
その手はまるで壊れ物に触れるかのように、私の頬を撫でた。
「じゃあ、いつかおまえの話も聞かせてくれ」
「……私の、話をですか?」
「ああ。辛くなけりゃ、おまえの故郷の話や小さい頃の話が聞いてみてえ」
「……あまり、面白い話じゃないですよ?」
「それでも良いんだよ。おまえの事を、知れたら」
土方さんの言葉に、小さく目を見張る。
私を知りたいと思ってくれる事に、嬉しくてたまらない。
「じゃあ、何時か……貴方の話を聞かせてもらえた時に、話ますね」
私が過ごしてきた話をーー。
二月になっても尚、この蝦夷地は雪が降る。
京にいた頃もそれなりに雪は降っていたし、かなり寒い時期を経験したけれども、この蝦夷地は京と比べ物にならない。
「今日も寒いね…」
「そうだね。蝦夷地の寒さには本当に慣れないよ」
私と千鶴は、話し合いをしている土方さんと相馬君にお茶を差し入れする為に湯呑みが置かれたお盆とお茶請けの落雁を持ちながら土方さんの部屋に向かっていた。
部屋に辿り着き、ノックをする。
そうすると、部屋の中から【入れ】という土方さんの短い言葉が聞こえるので私たちは中に入った。
「失礼します。お茶とお茶請けをお持ちしました」
「ああ、悪いな」
「ありがとうございます」