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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】


大鳥さんが出て行くと、部屋は静かになる。
そんな中で私は土方さんへと視線を向けると、小さい声で彼に訊ねた。

「戦に、なるんですね……」

戦になれば、また土方さん達は死と隣り合わせとなってしまう。
その事に表情を曇らせていた時だった。

「千尋、来い」
「……はい?」

土方さんはそれだけを言うと、部屋を出て行くので私は慌てて追いかけた。
そして彼は外に出るので、【どうしたのだろう】と思いながらも私も外に出てみる。

吐く息が白に染まる。
容赦ない凍てつく冷気に、私は小さく身を震わせた。
周囲を覆う、真っ白な雪を踏みながら私は土方さんの隣に立った。

「向こうに、山が見えるだろ?」
「はい」

彼が指さす方向は、雪が被った山がある。

「奴らは、あの山を超えて函館に迫ってくる」
「港じゃ……ないんですか?」

てっきり、新政府は海を越えてこの蝦夷地に来ると思っていたので、私は目を見張った。
すると土方さんは苦笑を浮かべながらも、説明をしてくれる。

「真っ向から挑んでくるほど、向こうも馬鹿じゃねえさ。戦いってのは、敵の弱点を突くもんだ。新政府軍がこの蝦夷地に攻め込むなら、乙部や江差の辺りから上陸するだろうな。函館港には、遠洋から砲撃を加える。俺たちは挟み撃ちされるってわけだ」
「……挟み撃ち」

彼の言葉を聞くと、旧幕府軍はかなり不利な状況に置かれているのが理解できる。

「何とかならないんですか……?」
「残念だが、海からの攻撃は止められねえ。船での戦になりゃ、押し負けちまうからな。この五稜郭は最後の戦場になるだろう。俺が武士として刀を抜くのもここで終わりだ」
「……土方さん」

土方さんの【終わり】という言葉は、やけに不吉に響いていた。
きっと、土方さんはこの地を死地としているのだろうと理解出来る。

「もし、もしの話ですよ……?新政府軍が攻めて来なかったら、貴方はどうしますか?」
「奴らが来なけりゃ、ただ終わるだけだな。【新選組】が要らねえ時代が来るってことだ」
「……新選組が要らない時代」

それは、武士が必要無くなる時代が来るということ。
武士が刀を抜かないという未来が来る……その事に少しだけの期待と、その時代が来たらどうなるのだろうという不安があった。

武士が無くなるのならば、戦は無くなるのかもしれない。
それは凄く良いかもしれないけど……
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