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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】


不意に、大鳥さんが表情を引き締める。
するとその場の雰囲気が張り詰めた気がして、私も少しだけ真面目な表情になった。

「本題に入るけど……。奴ら、来ると思うかい?」
「来るさ。雪が溶ければ、すぐにでもな」
「土方君が言うなら、間違いないな。実はね、僕も同じように考えていたんだ。榎本さんは話し合いで解決したいらしい。でも、僕はまず戦争になると思ってる」
「……戦いになるだろうな。新政府が俺たちを見逃すとは思わねえ」

新政府は今、蝦夷地が大雪に見舞われているからとこの土地に来てはいないと隊士の方々が話していたのを何度か聞いていた。
そして土方さんと大鳥さんは、雪が解ければ新政府が攻め込んでくると話しているのだと理解する。

「榎本さんたちは反対するだろうが……、俺たちは春までに戦支度を済ませておくべきだな」
「その辺りは、心配しないでくれ。根回しは済ませておくよ」
「しかし……、この蝦夷に来てあんたと意見が合うとは思わなかったな」
「そうだね。今だから言うけど、最初に会った時は面食らったよ」
「そりゃ、こっちの台詞だ。いきなりシェイクハンドがどうのって言われた時は、どうしようかと思ったぜ」

先程までの張り詰めていた空気が、溶けていくのを感じた。
二人は楽しげに、出会った頃の話をしていて私は思わず微笑んでしまう。

あの時、土方さんと大鳥さんはまるで水と油のように意見が食い違っていて、とても良好な仲を築けるとは思ってはいなかった。
でも今は、そうじゃない……土方さんにとって大鳥さんは良き仲間みたい。

「僕は、生まれつきの武士じゃないからね」
「……俺もだよ。元々は、多摩の百姓の倅だからな」
「でもそんな君が、今は誠の武士として皆の尊敬を集めている。生まれなんて関係ないさ。大切なのは、志だよ」

生まれなんて関係ないという大鳥さんの言葉は、とても優しいものだった。
彼はきっと、土方さんと同じで多くの部下に慕われているはず。

「僕たちは、自分が信じるものの為に戦う道を選び取った。自らの足で歩んで来た道の先が、今に続いてたってだけの話さ」
「何があろうと、俺たちの志は絶対に折れねえ。死力を尽くして最期まで挑み続ける」
「……同意するよ。邪魔したね」

大鳥さんは立ち上がるとそう、小さく笑いながら言って部屋を出て行った。
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