第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
土方さんの言葉に、私は目を見開かせる。
その意味が分からない程の子供じゃないけれども、本当にどういう意味なのか慌てた私には分からなくなっていた。
「おいおい、土方副長のあんな甘い顔してるの俺初めて見たぞ!?」
「土方陸軍奉行も、あんなお顔をされるのか……」
「千尋、顔真っ赤ね……」
そんな風に騒いでいれば、榎本さんが現れた。
「おう、相変わらず仲が良くて、結構なことじゃねえか。四人とも、祝言の媒酌人なら引き受けてやるから、遠慮なく声をかけたくれよ」
「まさか、榎本総裁にまで……」
「私と土方さんはそういう関係じゃありませんから!!」
私の叫び声が響いたのだった。
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そして、あれから数日。
大鳥さんが、土方さんの部屋を訪ねてきた。
「大鳥さん、どうぞ。粗茶ですが」
「ああ、お構いなく。土方陸軍奉行並の小姓は優秀だね。こんな子、どこで捕まえてきたんだい?」
「……そいつは、俺に連絡なしに勝手に辞令を出した誰かに聞いてくれ」
「僕は気を利かせたつもりだったんだけど。……羨ましくなってきちゃったなあ。可愛くて甲斐甲斐しい小姓さんなんて、文句のつけようがないよね」
「いえ、あの……その……」
大鳥さんの言葉に、私が顔を真っ赤にさせていく。
慣れない言葉のせいでもあるが、あの一件から私と土方さんまで皆さんに揶揄われるようになっていた。
それに土方さんは否定するわけでもなく、なんだか意味深な言葉ばかり零す。
恥ずかしくて、本当に心臓がもたない。
顔を真っ赤にさせる私を、土方さんは目の端でちらりと見やる。
「……まあな。こんな奴が傍にいてくれるんなら、もう他の小姓を置く気にはならねえよ」
「ひ、土方さん……!」
すると、大鳥さんは土方さんの言葉を聞いてから目を見開かせていた。
「まさか、土方君がそこまで言うとはね。……僕も彼女みたいなお嫁さんが欲しいよ」
「悪いが、他を当たってくれ。こいつは俺のもんだ。……手放すわけねえだろ?」
「土方さん……!?」
「ははっ、のろけられてしまったね」
私は本当に恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
熱くなりすぎて溶けてしまいそうと思いながら、私は持っていたお盆で自分の顔を隠しながら体を小さくさせる。
「土方君がこんな調子じゃ、あんまり長居すると怒られそうだね?」