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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第3章 巡察【共通物語】


「あ、ああ……捨てるつもりだって言ってたのを無理矢理もらってきたからな。だが、なんだってこの絵のことで、俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ?」
「……こんな鬼みてえな絵が、市中に出回ってみろ。俺たちの評判が、今まで以上に落ちるに決まってるだろうが」
「そ、それは、確かに……」

確かに、あんな絵が市中に出回ってしまえば、たださえ今も評判が悪い新選組の名前が更に落ちてしまう。
でも、何となくそれだけでは無いことは察していた。

私たちがあの日の夜、見てしまったせいで殺されかけた【アレ】と同じ容姿をしている絵だからなのだろう。
なんて考えていたが、これ以上また【アレ】の事を考えている事がバレたら危ないから、もうこれ以上考えるのは辞めよう。

「というわけで、この絵は没収させていただきます。……いいですね?」
「わかった……、好きにしてくれ。俺の疑いも、これで晴れたんだろう?」

疲れたようにため息をつく相馬さんに、近藤さんが直ぐに歩み寄った。

「相馬君だったな。俺は会津藩お預かり新選組局長を務めている、近藤勇という。うちの隊士が手荒な真似をしてしまって、すまなかったな。……許してほしい」

近藤さんはそう謝罪をすると、折り目正しい仕草で相馬さんへと頭を下げた。
そんな近藤さんに相馬さんは驚いたのか、目を見開いて慌てた様子を見せる。

「か、顔を上げてくれ!あんた……あなたは新選組局長なのでしょう?俺みたいな小身の者に頭を下げるなんて!」

相馬さんが驚くのも無理は無い。
お武家さんというものは、体面や上下関係が重いものであり、礼の仕方を間違えただけでもお家断絶の憂き目に遭うともまで聞く。

それに侍や武家の生まれで、それこそ上の立場の人が下の立場になる者に謝ることはまず、そうない。
下のものに罪や失敗を擦り付けたりするのが多いとも聞くのだから。

「局長という立場にあるからこそ己の過ちは素直に認めるべきだ……、と俺は思う。まあ、世に言う武士のあり方とは、少し違うかもしれんがな」
「本物の侍でありてえと思っちゃいるが……今の武士の腐った所だけを真似ても、しょうがねえからな」

思えば、近藤さんや土方さん達は武士らしくない気がする。
それに私が知っている武士ともかけ離れていた。
やがて近藤さんは優しい眼差しで、相馬さんの顔を覗き込み、尋ねる。
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