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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第3章 巡察【共通物語】


相馬さんという方と幹部の人達の様子を見ながら、私は隣に座っている千鶴に耳打ちをした。

「なんであの人、ここに連れてこられたの?」
「それが……あの人が持っていた錦絵を見て、原田さん達の顔色が変わって、それで屯所に連れて行くことになったの」
「……錦絵で?」
「私も詳しくは分からないの」

何故、原田さん達は彼が持っていた錦絵を見て、屯所に連れて来たのだろうか。
不思議に思いながらも、取り敢えず彼らのやり取りを見守ることにした。

「記憶にないな」
「おえ、てめえ……嘘をつくのもいい加減にしろよ」
「ねえ君。何も話すつもりがないなら斬っちゃうけど。それでもいい?」

何も話さない相馬さんに痺れを切らしたのか、沖田さんは刀に手をかけようとした。
相変わらず物騒な人だと驚いていれば、直ぐに近くにいた斎藤さんが制する。

「待て、総司。山南さんの話が先だ」
「相馬君と言いましたね。あなたはこの絵を、何を描いたものだと思っていますか?」
「浅葱色の隊服を着た……新選組隊士だろ」

山南さんが手にしている錦絵が見えた。
紙には白髪に赤眼の口が裂けている、浅葱色の隊服を着た男性が描かれている。
その絵を見た瞬間、私はあの日の夜に見た浅葱色の隊服を着て狂っている彼らを思い出した。

(一緒だ、あの夜に見た彼らと同じ……)

思わず息を飲みながらも、その紙をまた見れば【芹沢鴨】という文字が書かれているのに気が付いた。
恐らく描かれている人の名前なのだろう。

「確かに、着物はそうですね。ですがこの絵の人物は、白髪で目が赤く、口が裂けています。あなたはこれを見て、何とも思いませんでしたか?」
「確かに変だとは思ったが……、そいつが、新選組は鬼のような奴らだって言ってたから、そうなのかなって……」
「成る程、鬼、ですか……。的を射ているかもしれませんね。ところで、新選組のことをよく知っていて、絵の心得がある人物……、私たちにも心当たりがないわけではありません。……これを描いたのは、井吹君ですね?」

山南さんの言った名前に、相馬さんは驚いた様子で目を見張っていた。
私と千鶴は、その名前を聞いても知らない人の名前だった為、ただ首を傾げるだけ。
そして、やかで観念したのか相馬さんは小さく頷いた。

「もう一度聞くぞ。この絵は、これ一枚きりなんだな?」
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