第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】

「すみません。二人共、とても仲がいいので、二人きりの時は、それぐらいのことをしているんだと思ってました」
「はあ……」

八郎お兄さんの言い方からして、恐らくわざとそのうわさを流したのだろう。
聞いたところ、八郎お兄さんは相馬君と千鶴の交際に納得していないらしい。

全く悪びれない八郎お兄さんに、相馬君は崩れ落ちそうになっている。
それがおかしくて、私はついくすくすと笑ってしまった。

「でもさ、実際どうなんだよ？やっぱその……せ、接吻ぐらいは、したのか？」
「してないって！！」
「えっ、してないんですか？どうして？」
「どうしてって、特に理由があるわけじゃないですけど……」

顔を赤く染める相馬君に、八郎お兄さんがニヤリと笑う。

「なるほど。では、僕にもまだ挽回の機械はあるということですよね？」
「えっ！？挽回ってーー」
「千鶴ちゃん、実はあたなに見せてあげたい本があるので、よければ今夜、僕の部屋に……」
「えっ、あの……」
「ああああ！だ、駄目です！！二人きりは駄目です！」

もう、おかしすぎて私は声を出して笑っていた。
すると騒がしい声に釣られたのか、土方さんが顔を覗かせて相馬君たちを見て苦笑を浮かべる。

「あいつら、何やってんだあ？」
「相馬君が、八郎お兄さんに千鶴を取られそうになっているんです。ふふっ」
「八郎、あんまり相馬を虐めてやるなよ」
「嫌だあな、トシさん。僕は別に虐めていないですよ？そうだ、二人はどうなんですか？良い関係そうですが、そういう事はしたんですか？」

ふと、八郎お兄さんが話題を変えてくる。
するとさっきまで相馬君たちを見ていた野村君たちが、私たちの方へと視線を向けてきた。
その視線に私は思わず後ずさる。

「そうだよ、土方副長と千尋先輩はどうなんだ？そういう関係なのか？接吻とかしたのか？」
「な、何言ってるの！？私と土方さんは、別にそういう関係じゃ！！」
「おい野村、俺と千尋はそういう関係じゃねえよ。まだ、な？」
「……へ？」

土方さんの言葉に、私は驚いて固まる。
今土方さんは『まだ』と言ったのだ、その言葉に私はみるみると顔を真っ赤にさせれば土方さんが甘く微笑んできた。

「ひ、土方さん！？いま、今のどういう！？」
「ん？さあ、どういう意味だろうな？」