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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】


「……なんだか、最近凄く甘やかされてる気がする」

ぽつりと呟く私に、土方さんがちらっと視線を送ってくる。
そして柔らかい微笑みを浮かべてくるので、その微笑みに少しだけ頬が赤くなるのがわかった。

「千尋、悪いんだが使いを頼まれてくれねえか?」
「使いですか?はい、私ができることでしたら」
「相馬に、この書類を届けてきてくれねか。で、目を通したら大鳥さんに渡すように言ってくれ」
「分かりました。では、行っきますね」
「ああ、頼んだぜ。千尋」
「……は、はい」

本当に、土方さんはなんだか甘い。
前は苗字で呼んでいたけれども、私の下の名前で呼ぶようになっているし、それが慣れなくてつい頬が赤くなってしまう。
それを知ってか知らないのか、彼は名前を沢山呼んでくるのだ。

土方さんから書類を受け取った私は、相馬君の部屋へと向かった。
今は陸軍奉行介添になっている彼は、私の後輩ではなく上司である。
そして、彼の部屋に着いた私はノックをした。

「はい」
「相馬陸軍奉行介添、雪村です。入ってもよろしいでしょうか?」
「雪村先輩ですか?どうぞ!」

部屋に入れば、相馬君と千鶴の姿があった。
最近は千鶴もよく相馬君と二人っきりらしく、土方さんから聞けば【恋人】となったらしい。
それを思い出した私は、つい彼らを見るとニヤつく。

「土方さんから書類を預かってきたの。これに目を通したら、大鳥さんに渡してほしいって」
「ありがとうございます!……あの、つかぬ事をお聞きしますが、何故先程からニヤついているんですか?」

私のニヤつきに気が付いた相馬君が、少し居心地が悪そうにしている。

「土方さんから聞いたけれど……貴方たち、恋人同士になったんでしょう?……私は、聞いていないなあって」

そう言うと、相馬君は慌てて立ち上がると私の目の前に立つと勢いよく頭を下げてきた。

「報告するのが遅くなってしまい申し訳ありません!この、相馬主計……貴方の姉君である千鶴さんの恋人になりました!まだまだ頼りない男ではありますが、千鶴さんを幸せにしてみますので、どうぞ宜しくお願いいたします!」
「……相馬君!?」

相馬君の言葉に、千鶴は目を見開かせて顔を真っ赤に染めている。
そして私は、ちょっと驚いてからも微笑みを浮かべた。
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