第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
彼の言葉に、私は少し目を見張る。
「やっぱり副長のお傍には千尋先輩がいなきゃ駄目って、俺たちも痛感しました」
「でも、これからはずっとお二人で一緒にいられますよね」
「うん……きっと」
きっと、これからずっと私は土方さんの傍に居られるんだと思えば嬉しかった。
そんな時、とても懐かしい声が聞こえてきた。
「懐かしい声がすると思ったら……あなたも、蝦夷地に来ていたんですね」
「あ、八郎お兄さん!ご無事だったんですね!」
そこには、久しぶりに会う八郎お兄さんの姿があった。
彼も洋装を身にまとい、髪の毛をばっさりと切り揃えている。
だけど、私は彼の左手に痛々しい包帯が巻かれていることに気が付いた。
包帯を見た私は、八郎お兄さんに駆け寄るとその手を取って目を見開かせる。
「この、手……」
「……新政府軍との戦いで、少々手傷を負ってしまいまして」
「そう、だったんですね……」
「心配してくれたんですか?」
「当たり前です!幼馴染の心配はしますよ」
「……嬉しいですね」
相変わらずの柔らかい笑みを浮かべる彼に、私も少しだけ釣られて微笑む。
すると傍にいた相馬君が言葉をかけてきた。
「伊庭さんはこの間の選挙で、歩兵頭並、遊撃隊隊長に選ばれたんですよ」
「え、そうなんですか?すごい、八郎お兄さん!」
「この身体で、どれだけのことができるかわかりませんがわ、こうなった最後まで、トシさんと共に戦い続けるまでです」
「……新選組は、武士の道標ですからね」
私がそう告げる、伊庭さんはまるで得意げにするように微笑んで見せる。
「早くからトシさんたちを見出した僕は、先見の明があったってことでしょうか。ここでなら僕も、武士としての生を全うできる……」
「八郎お兄さん……」
「何かあったら、いつでも声をかけてください。皆、あなたとトシさんの味方ですよ」
「……ありがとうございます、八郎お兄さん」
それから、私は土方陸軍奉行並の小姓付きとして彼の執務を補佐する日々を送っていた。
土方さんは蝦夷地に来てからというもの、日中でも体調を崩すこともないらしい。
山南さんが言っていたように、北の風土は羅刹の血にかなり良い影響を与えているらしい。
そして私は、土方さんといる機械が今まで以上に増えていて、それだけじゃなくて彼は私にとても優しいのだ。