第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
「貴方は、何時も何時もそうです。私の事を幸せにできないと勝手に決めつけて、私の気持ちを無視ばかりする……!」
勝手に幸せに出来ないと決めつけ、女として生きろと私に言った。
だけど彼が拒絶したのは、私の幸せなのだ……彼の傍にいるという幸せを土方さんは拒絶したのだ。
(自分ばかり、辛い思いをしようとして……)
私はとうとう我慢出来なかった。
彼の勝手ばかりの気持ちに、怒りが既に爆発していたのである。
「自分ばかり苦労を背負い込み、自分ばかり辛い思いをして……!」
「……それが俺の役割なんだよ。俺になんとかできる問題なら、俺が苦労すれば済む話じゃねえか!」
「前にも言いましたが!それを見ている方々の気持ちも考えてください!そんな貴方を見ている私や他の方々だった辛いんですよ!?」
支えてあげたいのに、一人で背負い込んで一人で耐え続ける彼を見てきた人達が、どれだけ辛かったのか彼にはちゃんと分かっているのだろうか。
「私は、そんな土方さんを支えたいんです!ずっと、貴方の背中を見続けて、そう思い続けているんです!」
泣かないようにしていたのに、目元にじわりと涙が浮かんでくる。
涙目で睨んでくる私の剣幕に押されてなのか、土方さんは黙り込んでしまう。
やがて、彼は小さく息を洩らした。
「……参ったな……」
彼の言葉に数度、瞬きしてから困惑した。
「……江戸の女にゃ逆らえねえんだよ。言うこと聞かなきゃいけねえ気がしてくる」
彼の声はとても柔らかかくて、微かに苦笑を浮かべている。
そして彼は私へと手を伸ばして来たかと思えば、その温かな腕で私を抱き込んできた。
「……え」
驚きと困惑に私は身を固くさせ、つい身を引こうとしてしまうけれど、彼の腕がそれを許さなかった。
強く抱き締めて私を離そうとしない。
「おまえが、俺の元から離れてから……」
土方さんは言葉を途切らせる。
まるで、このままその言葉を告げていいのかと悩んでいるような、戸惑っているような感じが伝わってきた。
だが、彼は言葉を続けた。
「いくつか、わかったことがある」
彼の腕の力が、微かに強くなる。
そしてまた強く抱き締められ、なんだか互いの距離が詰められたような気がした。
「俺は……、おまえに支えられてたらしい」
「ひじ、かた……さん」