第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
ー明治元年・十二月ー
大鳥さんから連絡が届いたのは、松前藩が陥落してしまったすぐのこと。
松前藩は蝦夷地を納めていて、土方さんたちが蝦夷地で活動するのならば、真っ先に平定にしなくてはならない土地。
私は大鳥さんから手紙を受け取り、彼の手紙に書かれていた通りにした。
大鳥さんが手配していてくれたロシア商船に乗って、海を越えた。
「やあ、雪村君」
函館に辿り着けば、そこは聞いた通りに雪に覆われている。
しかもかなりの大雪であり、目にした瞬間とても驚いてしまった。
そんな私を大鳥さんが出迎えてくれた。
「このたびは便宜を図って頂き、本当にありがとうございました、大鳥さん」
久しぶりに会う彼に、私は深く頭を下げた。
「それから、蝦夷地共和国の樹立、おめでとうごさまいます」
船に乗っていた際に、乗り合わせた方々から蝦夷地共和国を樹立したという話を聞いていた。
「共和国なんて、大袈裟な呼び名だけどね」
旧幕府軍は、この蝦夷地にて共和国を築いた。
「細かな人事を決める選挙も終わったし、ようやく君を呼び寄せることができるようになったよ」
「選挙、ですか……?」
「君は、初めて聞く言葉かな?選挙ってのはね……」
初めて聞く言葉に、私がきょとんとしていれば大鳥さんは丁寧に説明してくれた。
彼が言った【選挙】というのさ、アメリカと呼ばれる国などで行われている政治方法らしい。
全員が一票ずつ入れ札を持ち、票の多さで誰が権限を持つべきが決める仕組み。
血筋や位やそういうのはではなく、全員の意見を聞いた方法。
「将軍公を、皆で決めるんですね……!」
そんな政治方法があるなんて知らず、私は感激してしまった。
「共和国の総裁は、榎本さんに決まったよ。皆を取りまとめられるのは彼しかいないしね」
「確かに、榎本さんならまとめられますよね」
ちなみに、大鳥さんは陸軍奉行に就任されて、土方さんは陸軍奉行並となられたらしい。
そして相馬君は陸軍介添というお役職に、千鶴はそんな彼の小姓となったと聞いた。
「……待っているだけの三ヶ月間は、やっぱり長かったかな?」
「そうですね……とても、長く感じました」
一人でずっと待つのは本当に長く感じた。
何時、大鳥さんに呼んでもらえるのだろうかと不安になりながら、焦りながら待っていた三ヶ月間が懐かしく思えてしまう。