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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】


相馬の、【他の男に取られたくない】という言葉に土方が微かに身体を動かした。

「……汚い嫉妬心もありました」
「嫉妬心か……」
「勿論、戦に出る俺は雪村先輩を必ずも幸せに出来るとは言えません。俺の傍にいなければ、苦しさや辛さを味わう事なく、女としての幸せを掴めていた。だけど、俺が雪村先輩を幸せにしたいと願ったんです。まあ、俺の我儘ですけどね」

そう告げた相馬の表情は少しだけ照れていた。
愛しい女性も傍に居れる、それが相馬にとってはなによりの幸せのようだ。
そんな相馬に、土方は僅かな羨ましさが浮かぶ。

自分では幸せにできない。
自分と居るより、傍から突き離した方が彼女の……千尋の幸せだと思った土方は、相馬が羨ましく思えた。

(だが、あいつは俺と居るよりも……他の男と幸せになったほうが幸せだろう。未来のない男と居るよりも)

土方は言葉に出さず、心の中でそう呟いた。
すると、部屋の扉が叩かれる音が聞こえて、土方は僅かに書類から扉の方へと視線を向ける。

ノック、という西洋での部屋に入っていいかを確認するもの。
そう、大鳥に教えられた土方は部屋の中から声をかけた。

「誰だ?」
「僕、大鳥だよ。入ってもいいかな?」
「大鳥さんか……入ってくれ」

そう告げると直ぐに扉が開き、外から大鳥が顔を覗かせるとずかずかと入ってくる。

「死にそうな顔してるねえ、土方君」
「何だ、嫌味でも言いに来たのか?」
「いいや?ただ、榎本さんから少し休むように土方君に言ってくれと頼まれてね」
「その言葉は、聞き飽きた」

土方は不機嫌そうに顔を歪ませると、大鳥から視線をそらしてから書類へと目を向ける。
そんな彼に大鳥は【やれやれ】と言わんばかりに、肩を竦めた。

「千尋君がいれば、君を叱って無理矢理にでも休ませていただろうね。やっぱり、彼女を連れてくるべきだったよ君は」

ちらりと、大鳥はそう言いながら土方へと視線を向けるが、土方は話を聞いていないように仕事を続けている。
これで反応しないのならば……そう思った大鳥は、笑みを浮かべてから言葉を続ける。

「彼女、美人だからなあ……きっと今頃、他の男性に誘われたりしてるかもねえ。ああ、君を忘れて恋人が出来ていたり」
「……何が言いてえ?」
「別に?ただ、君があの子を突き離したのなら僕が貰っても良かったかなと思ってね」
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