第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
ー蝦夷地ー
土方歳三は死に急いでいる。
蝦夷地の函館に辿り着いてから、土方はそう囁かれ続けていた。
無理な仕事をして、身体を壊すような仕事の仕方を続けていた。
それは雪村千尋を仙台へ置いて行ってから。
土方は、彼女を置いて行ってから無理な仕事の仕方を続けている。
「土方副長……いえ、土方陸軍奉行並。コンを詰めすぎではないですか?ちゃんと、休まれないと」
土方は蝦夷に来てから、陸軍奉行並となっていた。
そして相馬主計は陸軍奉行介添となり、雪村千鶴はそんな彼の小姓となっている。
そんな相馬と千鶴は、土方の元に来てから心配そうにしていた。
「休める時は、休んでいる」
短くそう応える彼の声には覇気が無かった。
そんな土方に、千鶴は顔を少しだけ強ばらせながら言葉を放つ。
「土方さん、気付いてますか?千尋が居なくなってから、土方さんはずっと無理をされています」
「ああ……アイツがいた時は、うるせえぐらいに休めって言われてたからな」
「……土方さんには、千尋が必要なんです。……お茶、いれてきますね」
苛立ったような、そんな表情を浮かべた千鶴は土方の部屋から出ていく。
そんな彼女を見送った相馬は、眉間に少しだけの皺を寄せながら土方を見る。
疲れきった表情、隈が浮かぶ目元。
誰が見ても休めていない彼に、相馬や千鶴に野村に島田……そして大鳥や榎本も休むように言っている。
だけど彼は、誰の言葉も聞こうとはしなかった。
「土方さん。やはり、雪村先輩……千尋先輩を置いていかなかった方が良かったのでは?」
「……おまえといい、大鳥さんといい……そればっかりだな。そういえば、おまえはアイツを、雪村姉を蝦夷地に何で連れてきたんだ?」
土方は書類から目を離さずに、そう聞いた。
「俺は、一度、雪村先輩と離れました」
近藤勇と野村、そして千鶴が新政府軍に捕らわれた際に相馬は一度千鶴と離れていた。
あの時は、とても生きた心地がしなかったのを相馬はよく覚えている。
「……あの時、雪村先輩と再開した時に思ったんです。もう二度と、あの人の傍を離れたくないと。雪村先輩と離れた時に、俺は生きた心地がしませんでした」
「……生きた心地か」
「それに、惚れた女性を自分の手で幸せにしたい、傍に居たい……。それに、手を離したとして他の男に取られたくない」