第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
「どうなろうと、新選組は将軍公と幕府の為に働く。それだけは、揺るがねえさ」
「新選組は武士の方々の道標ですものね」
そう微笑みながら言うと、土方さんは懐かしげな視線を空中にさまよわせていた。
「……おかしな話だよな。さんざん武士のまがい者として扱われてきた俺たちが、今や道標だとよ」
「それだけ、新選組が認められたということですよ。それに、近藤さんもきっと喜んでいらっしゃると思います」
「……だろうな」
脳裏には近藤さんが照れたようにはにかんだ笑顔を浮かべる姿が浮かぶ。
そんな近藤さんはきっと、土方さんの心の中にも浮かんでいるのだろう。
「土方さん、ますます死ねなくなりますね」
でも同時に、彼が背負うものが増えていく。
だけど、先に逝った人々から渡されたものを土方さんは大切に思っている。
だからこそ、彼は死ねないし死んではいけない。
「志を持ち続ける奴がいる限り、【新選組】は死なせらねえよな」
「はい」
前は投げやりになっていたけれども、今の土方さんは新選組の守り手である自分を肯定的に受け止めているみたい。
そんな彼の穏やかな表情に、私は安堵していた。
「……俺が、【新選組】を守らねえとな」
「はい」
少しだけ、土方さんの表情がくつろぐ。
最近は難しい顔をされたり、厳しくなったりすることが減っているような気がした。
(彼が、落ち着いた心でいられるのなら良かった……)
私はただ、それだけで良かった。
土方さんが穏やかにいてくれるだけで、私は嬉しいのだ。
そしてまた、数日のこと。
会津に残り、会津藩と共に戦っていた隊士の方々が仙台まで辿り着いたのだった。
けれど、私たちは訃報を聞くことになる。
「斎藤さんが、戦死なさいました。最期に……、【後は土方さんを頼れ】と」
会津から仙台に辿り着いた島田さんは、瞳に涙を浮かべていた。
この戦が始まってから、何度も何度も隊士の方々の訃報を聞いて、この表情を目にしたのだろうか。
(斎藤さん……)
涙が溢れそうになる。
だけど私は、彼らの前では泣いてはいけないと自分に言い聞かせながら泣くのを耐えた。
すると土方さんは島田さんの肩に手をかけてから、彼を労う。
「……苦労をかけたな、島田。おまえたちが生きててくれて良かった」
土方さんの言葉に、島田さんは目を大きく見開かせてから感極まった様子で顔を伏せた。