第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
後日のこと。
土方さんは榎本さんと共に改めて仙台藩へと足を運び、藩の重役と会談していた。
私は今回、倒れたばかりだからと宿に居るように言われている。
(同行出来なかったのは、悔しいなあ……)
そう思いながら、宿にて土方さんの帰りを待つ。
すると宿の玄関の方から話し声が聞こえてきた。
「土方さんの声と……これは、榎本さんの声?」
部屋を出てから玄関の方に向かえば、そこには土方さんと榎本さんの姿があった。
すると榎本さんは私の姿を見ると、人懐っこそうな笑顔を浮かべる。
「雪村君じゃねえか。今日は来てないからどうしたかと思えば、倒れたそうじゃねえか。大丈夫なのか?」
「あ、はい。ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありません」
「おまえ……部屋で休んでろって言っただろうが」
土方さんは、私が部屋から出ていることに厳しい目付きをしながら声をかけてきた。
「す、すみません……」
「大方、土方君の声が聞こえてきて来たんだろ?健気じゃねえか。大事にしてやれよ、土方君」
「……榎本さん、あんたそれどういう意味だ?」
土方さんは榎本さんに揶揄われながらも、私にお茶を持ってくるように言い部屋へと向かう。
そして私はお二人のお茶を用意したから、土方さんが寝泊まりしている部屋へと入った。
「ありゃ、もう駄目だな。仙台藩のお偉いさん方は、完全に戦う気をなくしちまってる」
「どうします?いっそ俺たちも、一緒に新政府に降伏しちまいますか」
「悪い冗談はやめてくれよ。いくら新しい時代だっつっても、勝った奴が好き放題できるなんて道理が通っちゃいけねえ。日本をこれから、西洋と肩を並べられる文明国にするつもりだってんなら、なおさらな」
「とはいえ、東北諸藩が落ちるのも時間の問題でしょう」
お二人は難しい表情をしながら話していた。
やっぱり、仙台藩は戦う意思もなければ旧幕府軍に協力するつもりも無いらしい。
「今後どうするか、考えがねえこともねえんだが……。最終的な判断を下すのは、大鳥君と合流できてからだな」
それから数日後。
私は土方さんからある話を聞かされていた。
「仙台より北の地に集結することに……?北の地って、もしかして蝦夷地のことですか?」
蝦夷地はこの国の北端に位置する島国。
海を超えなければ辿り着けないと言われる島国で、聞いた所では一年の半分は雪に覆われている所らしい。