第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
彼の言葉に、私は慌てて首を横に振る。
「今日は、本当に今日はたまたま調子が悪かっただけなんです……」
「また出先でぶっ倒られたら、俺が迷惑するんだよ」
「……そう、ですよね……。ごめんなさい」
確かにそうだ。
また、出先で私が倒れてしまえば土方さんのお荷物になってしまう。
その言葉に私はまた俯いてしまった。
「……ごめんなさい。でも、次は倒れないように気をつけますから、お傍に居る事は許してください」
「どうしてだ?近藤さんや山崎、源さんき俺の事を頼まれてるからか。……死んでいった奴らだって、てめえの身を犠牲にしてまで俺に尽くせとは言ってなかったはずだぜ」
「そう、ですけど……」
土方さんの言葉通りだ。
近藤さん達は、身を犠牲にしてまでとは言ってはいない。
でも、それでも私は土方さんの傍にいたいのだ。
「……私はただ、貴方の傍にいたいだけです」
「どうしてだ?」
「それは……その……」
言えるわけがなく、口を閉ざしてしまう。
私が彼の傍に居たいのは、私が土方さんを想っているから。
そんな事を本人に言えるわけもなければ、言ってしまえば彼の迷惑になのはわかっている。
「まあいいや。話したくねえなら、構わねえさ」
「あ、……はい」
やがて、土方さんは興味無さげに呟いてから私から視線を逸らしていた。
しばらくすると、彼は何かを思い出したように呟く。
「……おまえと雪村姉は確か、松本先生と親しかったよな?」
「私と千鶴が親しいというよりも、綱道父様が親しかったんですが……でも、私と千鶴は松本先生にはお世話になっています」
京にいて、松本先生と会った時に彼は私たちの事を色々と気にかけてくれた。
手紙のやり取りも何度もしていて、新選組の隊士の方々の手当ついてやお薬の方も相談に乗ってもらったことがある。
そういえば、松本先生とは大阪城でお会いした以来だなと思い出した。
松本先生はお元気にしているだろうか。
「そうか。……あの先生は、ちゃんとした人だ。人間として信頼できる」
「そうですね……」
ふと、土方さんの言葉に疑問を抱く。
急に何故こんな事を話し出したのだろうと、土方さんの言葉の意図を読み取ろうとしたけれども、やっぱり分からなかった。
「もし、この地で何かあったら、あの人を頼れ」
「……え?」