第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
視界が白く霞む。
さっきまで青空が見えていたはずなのに、今は白く霞んで何も見えない。
「おい、どうした?」
土方さんの声が遠い。
そう思った時には、私の意識はぷつりと途切れて地面へと倒れ込んだのだった。
「おい、雪村!?どうした、しっかりしろ!」
ふと、意識が浮上する。
頭痛と吐き気のようなものがあり、その不快感に顔を歪ませながら目を開けた。
「……あれ……?」
どうやら私は、布団の上にいるみたい。
そして視界には今は見慣れた、宿の天井が広がっている。
その事態に私は不思議に思いながら、言葉を呟く。
「宿……?」
「目が覚めたみてえだな。ここがどこかわかるか?」
隣から土方さんの声が聞こえて、顔をそちら向ける。
「土方さん……?あっ、私!!」
土方さんの姿を見てから、ようやく私はあの時に倒れてしまったのだと思い出す。
私は勢いよく飛び起きると、彼へと頭を下げて謝罪した。
「すみません、土方さん!私……」
「ーーこの、馬鹿野郎が!」
「……っ!!」
怒鳴られてしまい、私は思わず目をぎゅっと閉ざす。
そして恐る恐ると目を開けば、土方さんは目を釣りあげて怒りをあらわにしていた。
「具合が悪いんなら出歩いたりせず、宿にいりゃよかったじゃねえか!」
「す、すみません……」
何となく、朝から身体は重いとは思っていた。
でもそれが具合が悪いとは気が付かず、休むほどじゃないと自分で決め込んだ。
結果、それが土方さんにご迷惑をおかけする形となってしまった。
いたたまれなく、申し訳なく私は俯いた。
そんな私に土方さんはため息を吐くと、髪を掻きあげると呟く。
「……おまえを怒鳴りつけるのは、筋違いってもんか。親父さんが亡くなった後も、気を休める暇すらなかったからな。気を張って平気なふりすんのも、限界だったってことだろ」
「……その、それは……」
彼の言う通り、綱道父様を引きずってはいた。
でもそれは私だけじゃなくて、千鶴だって綱道父様の死を引き摺っている。
それに土方さんだって同じだ。
羅刹になった上、近藤さんに山南さんや平助君に原田さん。
多くの仲間たちを失っている彼は、私以上に辛いはずなのだから。
「……おまえは今後、仙台藩とのやり取りに同行する必要はねえ。ここで休んでろ」
「そんな……!私は別に平気です!」