第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
ー明治元年・九月ー
仙台城での事件も終わり、元号が【慶応】から【明治】へと変わったしばらくの頃。
私は仙台城前にて、一人待機をしていた。
夏の気配も消えていき、秋空になった空を見上げる。
これから少しづつ寒くなるんだろうと思っていれば、足音が聞こえてきたのでそちらへと視線を向ければ、不機嫌そうな土方さんがこちらへと歩いて来ていた。
「ったく、無駄に時間をかけやがって」
「……お疲れ様です、土方さん」
不機嫌そうなのと同時に彼は疲れた顔もしていた。
その様子からして、会合は上手くは行かなったのかもしれない。
「会合の様子は、どうでしたか?」
「どうもこうもねえよ。榎本さんと一緒に、何度も仙台藩のお偉いさんを突っついたんだが……【新政府軍な戦意は旺盛だ、まだ打って出るべきではない】ーーってな具合に、のらりくらりとかわされちまった。東北の雄・仙台藩とか偉そうに抜かしておきながら、土壇場になって腰が引けるとはな」
「……逃げ腰なんですね」
新選組や会津藩の方々は命を懸けて懸命に戦っていいるというのに。
頼りのはずの東北諸藩がこれでは、戦場は今以上に悪化してしまうかもしれない。
「ひとまず、宿に戻るか。今日は、日差しが強くていけねえ」
「そうですね、戻りましょうか」
歯痒く思いながらも、土方さんと私は宿へと戻ることにした。
宿に戻る最中、土方さんの言う通り日差しが強くて目眩のようなものを感じる。
私がこうなるぐらいなら、きっと土方さんはもっと辛いはず。
そう思いながら、私は土方さんへと視線を向けながら言葉をかけた。
「もうすぐで宿に着きますから、頑張ってくださいね」
だいぶ、顔が青ざめている。
やっぱり羅刹の身である彼には、この日差しはかなり辛いようだ。
「俺の心配してる場合じゃねえだろ。おまえはどうなんだ?」
「私は……別に平気ですよ?意外と丈夫ですから」
「何言ってやがんだ。俺に付き合って、夜通し起きてやがるくせに」
「そうじゃなかったら、土方さん無理ばかりされるじゃないですか……。見張る為ですよ、見張る為。それに貴方が眠ってる時は、ちゃんと私も休んでますから」
私の言葉に土方さんは納得していない様子。
そして、土方さんは小さく息を洩らすと空を見上げていた。
私も釣られて、空を見上げた時だった。
「……あ、れ?」