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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


気が付けば、戦いはいつの間にか終わっていた。
土方さん達の洋服は血に汚れていて、彼らの足元には血を流し続ける羅刹たち。

新選組、そして綱道父様の手によって生み出された羅刹の全てはたった今、ここで全滅した。

「少し、惜しかった気がしますね。これだけの数なら利用価値もあったでしょうに。新選組は、多大な兵力を失ってしまいましたね。今後の戦いは、勝ち抜けると思いますか?」

血を拭い、目を細めながら問いかけた山南さんに土方さんは清々しい笑みを浮かべた。

「端ったから負けるつもりで戦う奴はいねえよ」
「……土方さんは負けず嫌いだからなあ」
「何だか、土方副長がいれば負けない気がしてしまいます」
「確かに、相馬の通りそう思っちまうよなあ」

声を押し殺すように、平助君と相馬はくつくつと喉を鳴らしながら笑っていた。
新選組は多くの羅刹を失ってしまったが、土方さんたちの結束はとても強くなった気がする。

(決して、悪いことばかりじゃないのかな……)

私は綱道父様の手を握りながら、そう心の中で呟く。
千鶴は泣き止んだのか、目元を擦りながら私の手を握っていた。

「……綱道父様、最後まで私たちのこと思ってくれてたね」
「うん……。最後まで優しい父様だったね」

そう話していた時だった。

「う、ぐっ……!?」

不意に聞こえてきた苦しげな声に、私と千鶴は驚いてその声がした方へと視線を向けた。
視線の先には、平助君と山南さんが苦しげに顔を歪めている。

どうしたのだろうと驚いていれば、二人の髪は白に変わっていき、瞳は赤色に染まっていた。
そして山南さんは小さく笑いながら呟く。

「……限界が、きたようですね」
「限界って、そんな……まさか」

天霧が、以前に言っていた言葉が脳を過ぎる。
羅刹の力は決して、神仏からの授かりものではなく、本来なら数十年かけて使い果たすはずの寿命を前借りしたのもだと。
だから、羅刹の力を使えば使うほど寿命は削られる。

「そんな……そんなっ」

絶望に身体を震わせていれば、平助君は不器用に笑って私と千鶴へと視線を向けてくる。

「オレら、羅刹になるのが早かったしな」

そうだ。
平助君と山南さんは、誰よりも羅刹になるのが早かった。
そして誰よりも羅刹の力を使い、相次ぐ戦いで力を使って寿命は削られていった。

そして彼らの寿命は今……尽きようとしていた。
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