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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


「……綱道父様、辞めて……」
「私たちの手で鬼の王国を作り上げるーーいや、我々こそが新たな鬼の一族となるのだよ」
「辞めて!!」

私は思わず叫んだ。
その声に、綱道父様は驚いたように目を見開かせていた。
確かに、私は人間たちに復讐したいと思っていた事もある。
復讐を願わないほど私は綺麗なものじゃない。

(だけど、復讐をすれば、それは新たな復讐をまた生むだけ。無意味なだけ……)

それに、復讐をしてしまえば……人間や旧き鬼たちを襲えば、私たちはあの時、雪村の里を襲った人間たちと同じになってしまう。

「確かに、私は人間たちが憎くて殺意だってありました。でも、復讐をして襲って殺せば……私は、私たちは里を襲った愚かな人間たちと同じになってしまう。それに、幸村の里の同胞たちは、きっとそんな事を望んでいるなんて思えません!」
「……千尋」
「綱道父様は知っているでしょう?ご当主様が争いを嫌っていたのを、里の同胞たちも争いや傷つけ合う事を嫌っていたことを……」

鬼は本来、争いを嫌う。
ご当主様も、里の同胞たちも争いを嫌って、人間たちの戦に加担するのを拒絶した。
だから……里は襲われてしまった。

「綱道父様が、人間たちや私たちを助けなかった旧き鬼たちを憎むのは分かる。だけど、同じ事をすれば、私たちはその愚かな者たちと一緒になってしまうんですよ……?私は、あの愚か人間たちとは一緒になりたくない……!」
「……お前は、優しすぎるな千尋」

そう綱道父様が呟いたとの同時に、足音を響かせながら大勢の人々が広間に飛び込んできたのだ。

「……彼らも侵入者に気付いたようですね」
「こいつらは、新選組のーー!」
「……そうです。この城には新政府軍の羅刹だけではなく、我々新選組の羅刹隊も滞在させていました」

広間に飛び込んできたのは、新選組の羅刹隊だった。
その事に土方さんは目を見開かせていて、私たちも驚愕する。
いつの間にか、私たちを取り囲むように新政府軍の羅刹と新選組の羅刹たちが集まっていた。

「この国に存在する羅刹が、今ここに集結しているのですよ。西洋式の軍備を持つ新政府軍だろうと、確実に倒せるだけの最終兵器になります」

無数の赤い瞳に、冷や汗が背中を流れていく。
殺意も帯びていて、息をするのも苦しく感じてしまうぐらいだった。
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