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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


「それにしても……彼女たちを連れて来たのは早計でしたね。土方君は勘がいいですから、彼女たちがいなくなったことで我々の計略を察してしまったかもしれない」
「娘たちの居場所を知りたいなら、藤堂君を尾行しろと言ったのは君だろう?」
「藤堂君を泳がせろとは言いましたが、彼女たちを連れ去れとは言ってはいませんよ」

山南さんは小さくため息を洩らす。
飽きているような、そんな感じのため息を洩らすしてから肩を竦めた。

「まあ、何にせよ済んでしまったことです。過去を悔いるより、今後の策を練るべきでしょうね」
「それならば、心配いらんとも。羅刹隊が、藤堂君を始末した頃合だ。そろそろ仙台城まで戻ってくるだろう」
「平助君を……!?」
「そんな……」

綱道父様の言葉に、私たちは驚愕した。
そんな私たちに対して、綱道父様はまた優しい笑みを浮かべてくる。
慈愛を込められた瞳と表情は、残虐な事をしている者とは思いないもの。

「気の毒だが……、もう生きておるまい。あの数の羅刹に囲まれたのだからな」
「綱道父様……貴方、なんて事をっ!」

怒りと悲しみが同時に押し寄せてくる。
平助君が死んでしまったという事を信じたくない、だけど【彼が生きてはいない】と思ってしまう自分もいた。

綱道父様が新政府の元で作った羅刹は、日の光を浴びても平気な羅刹。
だけど平助君はそうじゃない……日の光に弱く、あの数を相手していたのだ。

(信じたくない……だけど、だけど……)

唇を強く噛み締めながら、目頭が熱くなっていくのを感じた時だった。

「誰が死んじまったって?勝手に決めつけんのは、やめてくれねえか?」
「平助君……!?」
「平助君!!」

広間に入ってきたのは、平助君だった。
だけど広間に入ってきたのは彼だけではなく、その隣には土方さんと相馬君の姿もあった。

「無事か?雪村たち」
「雪村先輩たち!ご無事でしたか!」
「相馬君!」
「土方さん……!大丈夫です!」

土方さんの姿を見た途端、不安が全て消え去っていく。
そして千鶴も相馬君を見た瞬間、その瞳に安堵の色を見せていた。
私は土方さんを見ながら頷いて見せれば、土方さんは微かに微笑みを浮かべる。

「なぜ、おまえたちがここに?まさか改良を重ねた私の羅刹隊が、ただの羅刹に破れたと言うのか……?」
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