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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


私たちが唖然としている間、平助君は羅刹たちと戦い続けている。
格好から見て、平助君が先程言っていた新政府軍の羅刹隊なのだろうか。

「くそっ……!何だよ、こいつら!昼間だってのに、どうしてこんなに動けるんだ!?」

平助君の言葉に気付いた。
今は昼間なのに、平助君と戦っている羅刹隊は苦しそうにもなく戦っているのだ。

数も多く、太陽が出ている昼間。
羅刹である平助君は、昼間の苦痛と大人数の羅刹たちとの戦闘で体力を削がれているようで、疲れが見え始めていた。

「一体、どうなってるの……!?」
「なんで、羅刹が昼間なのにこんなに動けて……」

私と千鶴がつぶやけば、綱道父様は悠然とした表情でその様を眺めてから呟く。

「……素晴らしいだろう?彼らは、日の光を克服した羅刹たちだよ」
「日の光を克服した羅刹たち……」
「この羅刹たちは、父様が……?」
「その通りだよ、千鶴、千尋。もしかすると誰かから聞かされているかもしれんが……私はずっと、新政府軍に囚われ、変若水の研究を続けていたんだ」

綱道父様の言葉を聞いた千鶴は、困惑しながらも叫んだ。

「父様、お願いします!羅刹たちを止めてください!このままじゃ、平助君がーー!」
「綱道父様、お願いします、止めてください!」

止めなければ、平助君が危ない。
そう思い綱道父様に叫べば、彼は思い出したように微笑みながら平助君の方へと視線を向ける。

「彼には、礼を言っておかねばなるまいな。彼のおかげでお前たちの居場所がわかったのだから」
「オレを、尾行してきたのか……!」

怒りを滲ませた目で、平助君は綱道父様を睨み付ける。
だが綱道父様は、平助君の言葉に返答はせずに優しげな眼差しを私と千鶴に向けて来る。

「今日は、お前たちを迎えに来たのだよ。これでようやく我々の一族を再興できる」
「一族って……、雪村の……?」
「雪村の再興……」
「この羅刹たちがいれば、一族の栄華を取り戻すなど簡単なことだ。……この成果を見れば、新政府も我々を軽く扱うことなどできまい。我々を見捨てた旧い鬼の一族を、一掃することだって夢ではないはずだよ」
「……父様は羅刹の力を使って、雪村家を再興するつもりなんですか?」

私は驚愕を隠せなかった。
小さい頃、綱道父様が【いつか雪村家を再興させる】と言っていたのを耳にしたけど、まさか本気だったなんて。
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