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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


「敵方の内情を探る為、密会してるだけかもしれないし……」

山南さんなら、敵方を騙して密会して情報を仕入れる事ぐらいはやりそう。
そう思っていたけれど、平助君は納得しない表情を浮かべていた。

「それなら、オレに嘘を言う必要はねえはずだろ?それに、一度や二度じゃねえだよ。何度も綱道さんと会って、やり取りしてるみたいでさ」

彼の言葉に、私と千鶴は口を噤んだ。
確かに敵方の内情を探る為ならば、わざわざ仲間でる平助君に嘘をつかなくてもいいはず。
それに何度も密会していたら、彼が新政府軍と内通していると考えてもおかしくない。

「土方さんに連絡を入れようともしねえし、オレ、どうしたらいいのかわからなくなって……。土方さんが仙台に着いたって聞いたから、山南さんの目を盗んで抜け出してきたんだ」
「そんなことが……」
「……土方さん、早く戻ってきてくれたらいいんだけど」

小さくそう呟いた時だった。
不意に、玄関の方から騒がしい音が聞こえてきて、それが足音だと気づく。
その足音は今、私たちのいる部屋へと向かってきている。

土方さんか、相馬君たちが戻ってきたのだろうか。
そう思ったけれども、どうもそんな感じはしなくて不安を感じていれば、ふすまが乱暴に開けられた。
そして見知らぬ男たちが部屋へと押し入ってきたのだ。

「何だ、こいつら?まさか……!」

私は慌てて立ち上がり、刀を手に取ると千鶴を自身の背後に隠すようにする。
すると、男たちは無言のまま抜刀すると平助君へと振り下ろす。

「おっーーと!」

平助君は素早く身をかわすと、自身も刀を抜いて男からの攻撃を受け流す。
そして、すれ違いざまに斬撃を見まうが、斬られた男は笑みを浮かべていた。

「くくくく……」
「……傷が、治ってる?」

男の傷口は、みるみると治っていく。
そして男たちの瞳が、血のように真っ赤に染まっていた。

「羅刹……!?」
「千鶴、千尋!オレの後ろに隠れろ!」

平助君がそう叫び、私は千鶴の背中を押すように彼の後ろに隠そうとした時だった。

「……逃げる必要などないとも」
「……え?」

聞こえてきた、懐かしい声に私は目を見開かせる。
そして千鶴も驚いた表情を浮かべ、声がした方へと二人同時に向いた。

「父様……!?」
「綱道、父様……!?」

そこには、ずっと行方知れずだった綱道父様がいた。
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