第12章 欠けていくもの【土方歳三編】
そして、私たちは斎藤さんと島田さんに別れを告げた。
別れを告げるのは想像以上に辛く、私と千鶴は泣きそうになるのを何度も我慢した。
何時か、彼らと互いに無事で再会できたら。
そう願いながら、新選組と私たちは仙台へとむかったのだった。
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ー慶応四年・九月ー
夏の季節が終わりかけ、秋風が吹き始める季節になった、九月一日。
新選組と私と千鶴は仙台へと至った。
仙台までは何事もなく辿り着けたが、着いてすぐに気がかりがことがあった。
先行していた山南さんと平助君の羅刹隊と連絡が取れないのだ。
平助君からな何ら音沙汰もなく、不安だけが仙台についた私たちに纏っていた。
そして仙台は近頃、謎の辻斬りが横行しているらしい。
仙台に着いてすぐに、町の人々が噂をしていたのが耳に入ってきた。
(まさか……。でも、完全に違うとは言いきれないかもしれない……)
そして、仙台城に辿り着いてた新選組と私たちを出迎えたのは洋装の紳士。
彼は土方さんを見つけるなり、目を細めて嬉しそうにしていた。
「おう、久し振りじゃねえか、土方君。元気にしてたかい?」
「ええ。榎本さんも、変わりない様子で何よりです」
この方は榎本武揚さんという方。
なんでも幕府海軍の副総裁らしく、無血開城した江戸を見限って、旧幕府艦隊の旗艦である開陽丸と以下八隻を奪い取った猛者らしい。
そして、鳥羽伏見の戦いのあとに大阪城から江戸に引き上げた際に、山崎さんの水葬を提案してくださった方だ。
そんな榎本さん率いる旧幕府海軍は、その軍艦を率いて新選組や私たちよりも早くに仙台に来ていた。
「……近藤さんの件は、もう聞いたか?」
榎本さんは、眉を小さく寄せて気まずそうに土方さんに尋ねた。
そして土方さんは彼の言葉に小さく頷く。
「力になれなくて、すまんかったな。……惜しい人を亡くしたもんだぜ」
「近藤さんも、喜んでると思います。榎本さんほどの方に、そう言ってもらえるなんて。あの人の為にも、今後のことを考えましょう。……仙台の状況がどうなってるのか、教えてもらえますか?」
「そうだな。先に言っとくが、あんまり愉快な知らせじゃねえかもしれねえぜ」
榎本さんと不穏にも捉えれる言葉に、土方さんと私は眉を寄せた。
「愉快じゃないということは……」