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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


大鳥さんが纏う雰囲気が何時もと違う。
少し厳しいものを感じると思いながら、大鳥さんへと視線を向けた。

「士気も大いに上がり、兵士たちは皆、君のことばかりうわさしているよ。だが、君の戦い方は、参謀としては失格も失格!問題外だ!指揮官が最前線に出て行ってどうする!」
「ちょ、ちょっと大鳥さん、怪我か治ったばかりなんですから、いきなりそんなことを言わなくても……」
「いいや、言わせてくれ!今日ばかりは、我慢できん!いいかい、土方君。部隊の様式化というのは、兵に様式の軍服を着せ、銃を持たせればできるものではない!僕らは戦力と人員をきちんと把握し、どうすれば勝てるのか、戦術をきちんと考えなくてはいけない!」

珍しく声を荒らげる大鳥さんに、私と島田さんは驚いてしまった。
いつも物腰の柔らかい人だから、叱るようにこうやって声を荒らげる姿はそう見ない。

「闇雲につっこむだけでは、昔と何も変わっていないんだよ!兵士を手足だとするならば、参謀は頭脳だ。頭脳が死んでしまっては、たとえ手足が残っていても戦争の遂行はできないんだ!」

大鳥さんの言葉に、土方さんと私は目を見開かせる。
その言葉は、今は亡くなってしまった山崎さんが土方さんに言った言葉だったから。
まさかの言葉に土方さんも、山崎さんの事を思い出したようで驚いていた。

『……何をしているんですか、副長!あなたは頭で、俺は手足のはずでしょう。そんな風に我を忘れて敵陣に突っ込んで、どうするんですか……。手足なら、たとえなくなっても代えは効きます。ですが、頭がなくなってしまっては、何もかもおしまいです』

土方さんが羅刹になり、我を忘れて風間と戦っていた時、彼はそう言った。
まさかまた、山崎さんと同じ言葉を聞くことになるて思っていなかった。

「……何か、山崎にまた叱られてるみてえだな」

懐かしげに土方さんは笑いながら、小さくそう呟いた。
だけで事情を知らない大鳥さんは怪訝そうにしている。

「ちょ……、土方君!何がおかしいんだい?僕は、真面目に話してるんだよ!僕も、僕の部下も、君をどれだけ心配したことかーー」

土方さんはただ、無言のままで大鳥さんを見つめる。
何時もなら皮肉の言葉を返しているけれども、今日は何も言わない。

「きょ、今日は何を言われても……、凄んでも意見を曲げるつもりはないからな!」
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