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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第3章 巡察【共通物語】


「あ、あの…」
「いいから。こういうことは、お兄さんに任せておくものです」

そう言ってお武家さんは私の肩を軽く押して座らせると、彼は武田さんの元へと歩いていく。
でも、大丈夫なのだろうかと心配になる。

(武田さんは、見る限り敵対する相手に容赦をするような人間じゃない……。もし、刀を抜く事態になってしまったら……)

不安になりながらお武家さんを見ていれば、彼は優しい声音で武田さんに声をかけた。

「すみません、ちょっといいですか。あなた、新選組の方ですね?」
「だとしたら、どうだというのだ?」
「そちらの主人は、尊皇攘夷派を出入りさせてないと言っているようです。一体、何の疑いで、この方を連れて行くつもりなのでしょうか?」
「……何だ。私の邪魔をするとは、貴様、この店に出入りする不逞浪士の一人か?」

武田さんの言葉にお武家さんは苦笑いを浮かべた。
怒ることもなく、ただ困ったように笑う彼は武田さんに切り返す。

「邪魔をしたら不逞浪士とは……。取り調べも何も、あったものじゃないですね」
「我々の隊務を妨害しているのだから、証拠としては充分だ」
「……わかりました。ここだと他の人たちに迷惑がかかりますから、外に出ませんか?」
「ふん、不逞の輩が。ようやく己の立場が分かったようだな」

小馬鹿にするように鼻で笑うと、武田さんはお武家さんを連れ出すかのように店の外へと出た。
慌てて私も追いかけると店の中で二人の様子を覗き見る。

武田さんは薄笑いを浮かべ、店を出たところでお武家さんに向き直る。
そして脅しをかけるように、刀を抜こうとしたが、それは出来なかった。

「む!?」

武田さんが柄に手を伸ばした時、一瞬でお武家さんが鯉口を制していたのだ。

「は……離せ!離さぬとーー」
「まさか、本気で刀を抜くつもりじゃないですよね?もし抜けば、僕も見て見ぬふりができなくなってしまいます。そうならないようにしたいのですけど」

お武家さんの目つきと声音はとても柔らかく優しい。
なのに、その声からは有無を言わせぬ何かを感じ取れた。
そして武田さんも、お武家さんの力量に気付いているのか刀を抜くことが出来ていない。

ふと気付けばいつの間にか、お店の周りに人が集まってきて何が起きているのか囁きあっていた。

「壬生浪の斬り合いか?」
「また壬生浪が騒ぎを起こしてるのか……」
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