第12章 欠けていくもの【土方歳三編】
その言葉に私は苦笑を浮かべていれば、大鳥さんの視線は土方さんから私へと向けられる。
「雪村君、一つ聞いても大丈夫かな?」
「はい?」
「……君は、女性だよね?」
大鳥さんの質問に、少しだけ目を見開かせた。
確かに見てわかる人には分かる男装だけども、今の軍と合流してからは私を【女】と見抜く人はいなかったから。
それに大鳥さんは気付かないと思っていたのだ。
「よく、僕は鈍いように思われるけど、流石に君が女性なのは気付いたよ」
「確かに、分かる人には分かる男装ですよね」
「……何故、女性である君がこうして男装してここにいるのか聞いても大丈夫かい?」
彼は恐る恐るという風に尋ねてきた。
私が男装しているのは訳ありなのだと察しているのか、聞いても大丈夫なのだろうかという不安げな表情をしている。
私が男装してここにいる理由。
昔の理由は、新選組の秘密を知ってしまい軟禁状態になり男装して新選組にいた。
今は、土方さんの傍にいたくて男装をしながらここにいる。
(流石に、羅刹とかそんな話は大鳥さんには言えないものね……)
ある程度、誤魔化しながら話そう。
そう思いながら、私は羅刹等の話を避けながら彼に理由を説明した。
「実は、江戸から双子の姉と行方が分からなくなっていた父を探して京に行った際に訳あって新選組に保護してもらったんです。新選組の方々は父と交流があったので、父が見つかるまで新選組に滞在する形になりました。流石に、女の格好で男所帯には居られず、男装を。ですが、父を見つける事が出来なくて気付いたら鳥羽伏見の戦いに……」
「……そうだったのかい。双子のお姉さんは今、一緒にいないのかい?」
「……実は、近藤さんが新政府軍に捕まった際に一緒に捕らわれてしまい……」
私の言葉に大鳥さんは申し訳ない表情になってしまった。
「ですが今、事情を知っている隊士の方が助命嘆願を持って助けに行ってくれたんです……」
でも相馬君は今、行方が分かっていない。
千鶴を、近藤さんや野村君を助け出せたのかもどうかも分からない状況だ。
「……そうなんだね。それで、今もお父上を探す為に一緒に行動を共にしているのかい?戦もあって危険なのに」
「今は……この人の傍にいたいという理由だけで居ます。……亡くなってしまった人達に託された事もあるんですが、私がこの人の傍にいたくて」