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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


土方さんの傍にいると、井上さんに山崎さん、そして近藤さんと約束したのだから。
そう思いながら彼を真っ直ぐに見つめていれば、土方さんは私から視線を逸らした。

「·····俺の邪魔だけはするんじゃねえぞ」
「わかってます。でも、貴方が無理をし続けるのなら邪魔はするかもしれませんね」
「·····たくっ、お前だけは」

私の言葉に呆れたように言葉を吐き捨てる土方さんに、私は小さく笑った。
そしてまた沈黙が流れ続けて、どうしようかと悩んでいる時だ。

「ぐっ、う……!」
「土方さん……!?」

突然、土方さんは苦しげに呻きながら前屈みになっていく。
驚いて彼に近寄れば、彼の髪は徐々に白くなっていき、瞳は赤く染まっていた。

じわりと額に脂汗が浮かび、赤い瞳を揺らす彼に私は目を見開かせながら彼の身体を支えた。
そして辺りを見渡しながら人が居ない場所を探す。

「土方さん、取り敢えず木陰に行きましょう……!」

人目に付かないように、土方さんを支えて木陰へと連れ込んだ。

「くそっ、こんな時まで……!」

苦しげに息を荒げている土方さんは、苛立ちをあらわにさせていた。
吸血衝動が訪れる度に、彼は忌々しそうにしているのを何度も見てきている。

そんな彼を見ながら、私は腰に差してある刀へと手をかけた。
私が苦しんでいる彼に出来ることは、血を彼に捧げることしか出来ない。

「土方さん……」
「……俺が、やる」

土方さんは、眉間に皺を寄せながら苦しそうに息を吐くと私の手を掴んで刀から離させてから自分で私の刀を抜き取った。

私はそれを見てから、ゆっくりと自分の着物の襟元を崩していく。
すると土方さんは抜き取った刀を手にしたまま、私の背後へと周り、あらわになったうなじに指を這わす。

(……やっぱり、擽ったい)

そう思った瞬間、首筋に鋭い痛みが走る。
鋭い痛みに少しだけ顔を歪ませていれば、すぐに傷口に熱い息が触れた。

「んっ……」

そして傷口に土方さんの唇が触れる。
小さく啜る音が聞こえると、次は熱い舌がゆっくりと傷口を舐め上げて血を飲んでいく。

「……っ、う」
「……はっ」

擽ったさとわずかの羞恥心に、思わず身をよじればそれを許さないと言わんばかりに抱き寄せられる。
前と同じように彼の腕に動きを止められ、私は何とも言えない羞恥心に耐えるように瞳を閉じた。
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