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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


「登った先に何もねえってわかっちまったら、これからどうすりゃいいんだよ。俺は、何を信じて生きていきゃいいんだ?」

土方さんの言葉の端々には、痛々しいほどの苦悩が滲んでいるのが分かった。
彼は今、味方だった幕府に凄まじい早さで変わっていく戦の常識や世の流れに裏切られている。
そのせいで深く傷付いているのだ。

「貴方は今……、信じてきたものを見失って不安なんだと思います。でも、今ここに残っている隊士の方々や島田さんが信じているのは、やっぱり土方さんなんだと私は思います」

私は、向こう側の焚き火に集まり何かを話している隊士の方々へと視線を向けた。
その中には島田さんもいて、私はそんな彼らを見ながら言葉を続ける。

「土方さんが、貴方がいれば大丈夫だって……、貴方の前では臆病な姿は見せられないって思ってるから。だから、銃を持った敵を相手にしても戦えるんだと思いますよ」

私の言葉なんてちっぽけだ。
役に立つ訳じゃないし、彼の為にもならないとわかっているけれども、私の言葉の中から何かの答えになるのもがあればいい。

「私には、新選組が存在している意味や信じるものとか·····難しいことはわかりません。ですが、何故ここにいるのかと言われると·····やっぱり貴方の事を信じてるからです。ですから·····」

そこまで言って私は口を閉ざした。
あの時同様に、私の言葉は彼を追い詰めているかもしれないと思ってしまったから。
私なんかの言葉で彼を追い詰めたくないと思いながら、無言になった私を見ながら、土方さんは目に優しそうな光を灯していた。

「·····そうだよな。見失っちまったのってのは、てめえでもう一度見つけなきゃどうしようもねえよな。それに、今はでかい戦が控えてる。あれこれ悩むくらいなら、勝つことを考えねえとな」

土方さんはそう言って、夜空をゆっくりと見上げた。
世の流れが変わる中で、この星が瞬く夜空だけは変わらずにいる。
美しくて、何処か悲しくなってしまう夜空だけは·····。

夜空を見上げながら、再び流れた沈黙に私は何も言えずにいた。
何を話そうか、何をすればいいのだろうかと思いながらも火にくべられた木が弾ける音を聞いていた時ーー。

「·····おまえ、本当にここにいるつもりか?」
「え?」
「俺の傍を離れねえとか言ってただろうが」
「·····もちろんですよ」
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