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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


土方さんの言葉に私は、思わず口を閉ざした。

「俺たちは今まで、二人で新選組を背負ってたんだ。……俺一人で、支えきれるわけねえだろ」

今まで、土方さんがこんな風に新選組に関することで投げやりに語るのは初めて見た。
その事に驚いていれば、彼は肩を落としながら無気力そうに言葉を続ける。

「……新八の言う通りだったよな」
「えっ?」
「甲府城に行くって決まった時、あいつと原田が言ってたろ?勝安房守が、軍資金や大砲を気前よく出してくれるはずがねえ、何か裏があるんじゃねえかって。……その通りだったよ。新政府軍に江戸城を明け渡すって決めたのは、その勝安房守だったらしい」
「そんな……!」

そうだとしたら、新選組はまるで江戸城を引き渡すのに邪魔になるからと甲府に向かわされたようなもの。
まさかそんな事あるわけないと思っていたかったけれど、土方さんは私の思っている事を肯定するようにうんざりした顔で言葉を放った。

「新政府と穏便に話を進めてえのに、俺たちみてえなのがいちゃ邪魔だから、体よく追っ払われたってことだ」

彼は乾いた笑みを漏らすと、足元にあった石を勢いよく蹴りつけた。
そして苛立ったように声を荒らげる。

「……ああ、くそっ!どうして気付かなかったんだよ。近藤さんに戦の指揮を執らせてやりてえ、戦場に立たせてやりてえって気持ちに目がくらんじまった。……それが負け戦になっちまって近藤さんのやる気をなくさせちゃ……、何の意味もねえじゃねえかよ」

土方さんの言葉に私は何も言えなくなってしまった。
どう言葉をかけるべきなのか分からず、ただ彼から視線をそらして俯く事しか出来ない。

心血を注いで作り上げた新選組を、本来味方のはずである幕府に否定され、更にはそのせいで近藤さんを失うことになってしまった。
こんな状況で私は彼に言葉をかけることが出来ない。

「おまけに、必死こいて剣術の稽古して……、ようやく刀を差せるようになったってのに、鉄砲相手じゃ手も足も出ねえときた。武士ってのは、戦が専門じゃねえのか?俺たちが信じて追いかけてきたものって、一体何だったんだ?その先に何かがあるって信じてたからこそ、きつい思いして、みっともなく歯食いしばって、坂を登ってきたんだぜ?」

乾いた笑みを浮かべた彼の瞳は悔しさと、どうしよもうない怒りが浮かんでいた。
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