第3章 巡察【共通物語】
こうして私は土方さんの外出に同行、千鶴は原田さん達の巡察に同行する事になった。
かれこれ五ヶ月ぶりに目にする外の風景。
楽しみたい気分もあるが、前を歩く土方さんは何時もより不機嫌であり楽しめる気分でもなかった。
「ったく、どうしてこんなことになっちまったんだ……」
そんなに私が同行するのは嫌だったのだろうか。
それはそれで傷付くのけれども……と少し泣きたい気分になりながら土方さんの後ろを歩く。
暫くして、とある茶屋の前を通りかかった時である。
土方さんの前に、見知らぬ人が立ち止まり声をかけてきた。
「副長、こちらにいらっしゃいましたか。実は、ご報告しなければならないことがありまして……」
土方さんを【副長】と呼んだということは、この人も新選組の隊士の方なのだろうか。
そう思いながら二人を見ていれば、彼は土方さんに何かを耳打ちしていた。
そして土方さんはその言葉に耳を傾けたあと、私の方を振り返る。
「……急用ができた。おまえはこの店に残って、綱道さんの聞き込みをしていろ」
「え……?あの、それだと私一人になってしまいますけど、いいんでしょうか?」
逃げるつもりはないけれども、監視しなくても大丈夫なのだろうか。
なんて思っていれば、土方さんは私の心の奥底を見据えるような眼差しで見てきた。
「おまえは、逃げる為に俺にくっついて来たのか?」
「いえ、それはないです」
「なら、つまらねえ質問するんじゃねえよ。やることをやって待ってろ。いいな」
「……わかりました」
なぜ、私をここに残すのかはわからないけれども【待ってろ】と言われたので私はお店の中で聞き込みをすることにした。
お店に入り、何人かのお客さんやお店の方に声をかけて父様の事を聞いてみたが、残念ながら父様の手掛かりはつかめなかった。
「……千鶴の方は、何か手掛かりはつかめたかな」
そう呟きながら、すっかり冷めてしまったお茶に口をつけていた時だった。
聞いた事のある声が聞こえてきた。
「神妙にしろ、新選組の御用改めだ!ここの主人はどこにいる!」
「……あれは、武田さん?」
見慣れた浅葱色の隊服を着て店の中に入ってきたのは、武田観柳斎さん。
なぜ、急にこのお店に来たのだろうかと思っていれば緊張の面持ちをしたお店の主人の人が武田さんの元に姿を現した。