第3章 巡察【共通物語】
「……言いたいことはわかりましたけど、この子たちのお守りを僕たちに任せっぱなしってのは、気に入らないなあ。今日は確か、土方さんも外出する予定が入ってましたよね?今後の為にも、可愛い小姓たちを同行させて、色々勉強させたらどうですか?」
沖田さんの言葉に土方さんは眉間に皺を寄せて、面倒くさそうにため息を吐いた。
「何を言ってやがる。こいつらが俺の小姓っつうのは、おまえが勝手に言っただけだろうが」
「でも他の隊士たちは、完全にそう信じ込んでるみたいですよ。【嘘から出た真】なんて言葉もありますし、相応の仕事をさせた方がいいんじゃないですか?」
沖田さんと土方さんの言い合いが始まり、場の雰囲気は剣呑になっていく。
そんな二人を見ながら、私はこの二人は仲が悪いのだろうかと首を捻っていれば、原田さんは私たちに小声で話しかけてきた。
「……ま、今の京は物騒だし、無理に出かける必要はねえと思うぜ。俺たちも一応、綱道さんの顔はわかるんだしな」
「えっと……千尋、どうする…?」
「どうしようか……」
父様が居たという伏見の方へと向かうか、居ない事を想定して巡察に同行させてもらうか。
それとも小姓という役割を勉強する為に土方さんに同行するか、あるいは立場を考えて屯所に残るか。
でも、これからの事を考えるなら土方さんの小姓として勉強はしていた方がいいかもしれない。
「千鶴、二手にわかれよう」
「え?」
「では、私は土方さんに同行させてもらいます」
私の言葉に土方さんは思いっきり苦虫を潰したような表情を浮かべる。
「おい……おまえまで何を言い出すんだ」
「これからの為にも、小姓としての勉強はしておきたいですし、土方さんが外出されて町を歩くなら、私もその際に父を探せますので。それに、私たちの素性を怪しんでいる人もいるので、小姓らしい行動した方がいいと思うんですよ」
にっこりと微笑みをうかべながら言えば、土方さんは相変わらず苦虫を噛み潰したような、迷惑そうな表情のままため息を吐く。
「……あのな。総司の言うことを馬鹿正直に受け取るんじゃねえ。こいつは面白がってーー」
「可愛い小姓たちができて良かったですね、土方さん」
土方さんは暫く沖田さんに睨んでいたが、諦めたようにため息をまた吐くと私を見てきた。
「……わかった。ただし、俺の仕事の邪魔はするんじゃねえぞ」