• テキストサイズ

君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


「僕、あの人のことは全然好きじゃないし、はっきり言ってどうなってもいいけど……土方さんの傍にいてあげて。あの人が倒れたら、新選組は立ち行かなくなるから」

彼の言葉に私は少しだけ目を見開かせた。
今まで、沖田さんが土方さんに対して酷い言いようをしてきたのは聞いていたし、彼への態度も何度も見てきている。
だけど今まで、こんなお願いを沖田さんにされた事はなくて驚いてしまった。

なんだかんだ言いながら、沖田さんは土方さんの事を心配しているのかもしれない。
言い方はあまり良くないけれども、彼の事を思っている事は何となく感じた。

「……はい、お任せください」
「うん、任せたよ」
「話は終わったか?そんじゃ、行くぞ」

土方さんに促された私は、沖田さんから離れて歩き出しながら彼の方へと視線を向ける。
彼は無邪気な子供のように私たちに手を振っていて、私も振り返した。
そして、私と土方さんは沖田さんがいる民宿を後にした。

民宿を出た後、土方さんは一言も発することなく歩き続けていた。
そんな彼の後ろ姿を見ながら、先程沖田さんと交わしていた【次は近藤さんを連れてくる】という言葉を思い出す。

(あの約束、もしかしたら果たせないかもしれない……土方さんはその事を分かってもいるはず)

そんなことを考えていると、土方さんが不意に足を止めたので私も足を止めて立ち止まった。

「……雪村、おまえは先に江戸を出ろ」
「……え?先にって、土方さんはどうするおつもりなんですか?」
「近藤さんを助けてもらえるよう、もう一度、幕府に直談判してくる」
「今からですか!?……やれることは全部、やり尽くしたのでは?」
「結果が出てねえ以上、充分とは言えねえよ」
「ですが、長く江戸に留まるのは危険です。新政府軍はもう直ぐそこまで来ているんですよ?……もし、土方さんも近藤さんのように捕まってしまえばーー」

昨日、土方さんはこんな事は言っていなかった。
なのに突然何故、直談判しに行くなんて言ったのだろうと私は眉間に皺を寄せる。

「おまえは、俺の判断が間違ってるって言いてえのか?」
「……そういうわけじゃありません!」
「じゃあ何だっつうんだ。文句があるならはっきり言え」

苛立ったような言葉を投げかけてくる彼に、私は睨みつけながら思わず叫んでしまった。

「土方さん、しっかりしてください!」
/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp