第3章 巡察【共通物語】
後日、屯所内に限っての話ではあるけれども私たちの行動範囲を広げても良いとの言葉が、井上さんの口から知らされた。
許可が出たのは掃除、洗濯、炊事という日々の雑用。
雑用でも部屋に閉じ籠っているよりは、少しは有意義な時間が過ごせそう。
そう思いながら私たちは日々の雑用をこなしていった。
ー元治元年・五月ー
年号は文久四年から元治元年と代わり、元治になって初めての初夏が近付いてきた頃。
私たちは、朝食の後片付けをしていると斎藤さんに呼ばれ、共に広間へと来ていた。
「副長、斎藤です。雪村たちを連れて参りました」
「入れ」
土方さんの声が聞こえると、斎藤さんは静かにふすまを開けて中へと入っていくので私たちも着いて入った。
広間には土方さんの他、沖田さんに斎藤さんに原田さんと平助君の姿もある。
「すいぶん長く待たせたな。おまえ達を外に出してやるときが来た」
「……本当ですか!?」
「それって、父様を捜しに行けるということですか!?」
私たちの言葉に土方さんは頷いて、ある情報を私たちに聞かせてくれた。
「父と特徴の一致する人が、伏見にいた……!?」
「真偽は定かじゃねぇが、本人かどうかは、娘のおまえ達に確かめてもらうのが一番だと思ってな」
その言葉に私と千鶴は頷きで応えた。
真偽か定かではなくとも、父様の情報があっただけでもとてもありがたい。
「それで、父によく似た人というのは、一体どこに?」
「伏見にある寺田屋って宿だ。これから斎藤に確かめに行ってもらう」
「斎藤さんに……」
ということは私たちはこれから、斎藤さんに同行して寺田屋という元に向かえばいいのだろうか。
そう思っていれば原田さんが口を挟む。
「だが、綱道さんがまだそこに留まってるとは限らねえだろ」
「ああ。伏見にいたってことは、京の町中をうろついてる可能性もある」
「その通りだ。だから、原田と新八、それから平助の巡察にこいつらを同行させて綱道さんを捜してもらってもいい」
「オレたち全員で?いつもは手分けして順番に見回りしてるのに……」
土方さんは平助君の問いには答えず、私たちの方へと視線を送ってくる。
その視線に察しはついた。
原田さんに永倉さんと平助君たちは、私たちが逃げた時のことを想定しての人選なのだと。
そして平助君も察したのかそれ以上は何も言わなかった。