第11章 乞い求む【土方歳三編】
「おまえ、起きても大丈夫なのか?しかも、その格好ーー」
「ずっと一人で寝てるのにも、飽き飽きしちゃって。このままじゃ活躍できそうにないし、そろそろみんなを追いかけようと思うんですけど」
沖田さんは髪の毛をばっさりと切っていて、洋装を身につけていたのである。
しかも彼の腰には刀が差してあり、彼の格好とそして言葉を聞いた土方さんの表情が厳しいものにかわった。
「ふざけたことを抜かすんじゃねえ!その身体で刀を握れるわけねえだろうが!」
「そんなことありませんよ。このところ、すごく調子がいいんですから……っーーげほっ、ごほっ!ごほっ!」
「沖田さんっ!」
言葉を途中で、沖田さんは激しく咳き込みその場にうずくまってしまった。
私は慌てて彼に駆け寄るとその背中をさするが、驚いて手を思わず離しそうになってしまう。
(……すごく、痩せてる。骨がわかるぐらいに)
背中からは肉がそげ落ちていて、触っていると骨の形が分かるぐらいに痩せていた。
その事に目を見開かせていたが、すぐに私はその背中をさする。
「……言わんこっちゃねえ。病人は病人らしく、静養してろ」
土方さんの発した言葉に、沖田さんは無念そうに唇を噛んでいた。
そして暫くの沈黙が続いたが、沖田さんが静かにその沈黙を破る。
「……近藤さんは、どうしてるんですか?今日も、来てくれないんですか」
彼の言葉に思わず息を飲んだ。
だけど土方さんは表情を一つ帰ることもなくーー。
「あの人は、今や大名だからな。色々と用事が立て込んでるんだよ」
「怪我の調子は?まだ、動くのは辛いんじゃないですか」
「怪我をしたのは、もう半年も前だぜ?ピンピンしてるよ。刀を握るのはちと難しいが……、ま、今の立場じゃ近藤さんが実戦に出ることもねえからな」
「自分のことみたいに、得意そうに言わないでくださいよ。……でも、そうか。近藤さん、元気なんですね」
土方さんのその言葉で、沖田さんはほっとした様子を見せていた。
多分、いや絶対に今の沖田さんを支えているのは近藤さんという存在のはず。
そんな彼に、近藤さんが敵に投降しただなんて言えるわけがなかった。
「次こそは近藤さんを連れてきてやるから、おとなしく待ってろよ。いいな」
「信用せずに待ってます。……土方さんって、嘘吐きですから」