第11章 乞い求む【土方歳三編】
相馬君は苦しげな顔で、土方さんを見ていた。
しばらくして、土方さんは険しい表情をしながら彼の言葉を却下したのである。
「いや、今すぐには辞めろ」
「何故ですか!?早く助けにいかなければ、近藤局長は……雪村先輩や野村が!」
「近藤さんは、今は大名の位を持っている。そう簡単には殺されねえだろう。……助命嘆願を書く、それまでお前は助けに行くのを待て。下手に動けば、逆に三人の命が危うくなる」
土方さんの言葉に、相馬君は絶望に近い表情を浮かべていた。
すぐに助けに行きたいのにそれを止められた事に対しての絶望なのだろう。
だけど土方さんの言う通り、下手をすれば余計に三人の命が危うくなってしまう。
「すぐに、助命嘆願出来るようにする。それまで待て……。雪村、お前にはかなり酷な事を言うが、姉を助け出すのは待ってくれ」
「……はい」
今すぐにでも助けに行きたかった。
あの時、やっぱり二手に別れることを良しとしなければ良かったと色んな後悔や苦しが溢れだしそうになる。
そんな時、相馬君は私の目の前で深く深く頭を下げてきたのだ。
「申し訳ありません、雪村先輩……。必ず、姉君を守ると誓ったのに、俺はっ……」
「……許さない、なんて言えないよ」
「……雪村先輩」
「だって君、私以上に苦しそうな顔しているから……」
そして今にも泣き出しそうな表情にもなっていた。
こんな彼を責めれる訳もなく、でも私は微笑みかけることは出来なかった。
だけど、彼には今そう言葉をかけるしか出来ない。
「……今は、あの子が無事である事を祈るしかできないよ」
「…………本当に、申し訳ありせんでしたっ」
そして私たちは、苦しい思いを背負ったまま北へと向かう事を決めた夜。
私と土方さん、そして相馬君は人目を忍んでから江戸に戻ってきていた。
ある民家へと辿り着いたとき、相馬君は知り合いに会いにいくとかで苦しげな表情のままで、その場に立ち去ってしまった。
私といる事が苦しかったのかもしれないが、気を遣ったのかもしれない。
だって私たちを出迎えたのは……。
「こんばんは、土方さん、千尋ちゃん。まさか、僕のお見舞いにきてくれるなんて思いませんでしたよ」
私たちを出迎えたのは、労咳で療養している沖田さんだった。
彼は私たちを何時もの笑顔で迎え入れてくれたが、前と変わっている所があった。