第11章 乞い求む【土方歳三編】
その後、私たちは江戸へと向かった。
江戸に向かう道中はただただ静かで、土方さんは何も言葉を発さない。
人目を忍んでいる時だった。
私たちは相馬君と再開したのである……そう、相馬君だけと。
そこに千鶴の姿はなかったのだ。
「……相馬君、千鶴は?」
胸騒ぎがする。
苦しげな表情をしている彼を見ながら、私は不安で胸が押し潰されそうになっていた。
「ねえ、相馬君……千鶴は?千鶴は、何でいないの?君と、一緒にいたのに、なんでいないの……」
「……副長たちと別れて直ぐに、敵兵と遭遇して戦闘になった際に雪村先輩とはぐれてしまい……」
「……はぐれた?」
「その後、探していた時に長岡邸付近に戻った際に雪村先輩が近藤局長と野村と共に敵兵に投降しているのを、見つけました」
彼の言葉を聞いた瞬間、私の身体から力が抜け落ちた。
その場に倒れ込みそうになった瞬間、隣にいた土方さんが目を見開かせて私を抱き寄せる。
「雪村……!」
「千鶴が……敵兵に……、うそ……なんでっ」
声が震えていた。
千鶴が敵兵の所にいるという言葉が信じられなくて、私は目を見開かせながら相馬君を見る。
彼は泣き出しそうな顔をしながら、私に頭を下げてきた。
「申し訳ありませんっ……」
「……雪村姉は、近藤さんたちといるのか」
「はい」
「直ぐにどうこうされる訳じゃねえかもしれないが……」
あの子は女だ。
もし女と分かった場合、直ぐに殺されたりなんてしかいだろう。
あそこに居た女中か何かが男装しているのかもと思われるかもしれない。
だけど、絶対に安全とは言えない。
もし女とばれた時に、何か酷いことをされるかもしれないのだ。
そう思った瞬間、私は震えながら呟いた。
「千鶴の、ところに行かなきゃ……」
「……馬鹿言うな!お前が行っても、同じように捕まるだけだ!」
「でも!もし、あの子に何かあれば……私は、私はっ」
土方さんの叱責の言葉に、私は叫ぶように言い放つ。
目には涙が溢れていて今にも零れそうで、私は唇を噛み締めた。
そんな私に土方さんは苦しそうな表情を浮かべている。
「……土方副長」
「なんだ」
「俺に、雪村先輩たちを助けに行くことを許可してはいただけないでしょうか」
「……なんだと?」
「俺は今、羅刹となった身です。無理を多少すれば、三人を助けられるかもしれません」