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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


そんな中、土方さんは険しい表情のままで兵士たちを無視して通り抜けようとしていた。

「止まれと言っているだろう!貴様、まさか幕兵か!?」
「……いや、こいつの顔、どこかで見た覚えがあるぞ……。そうだ!新選組の土方だ!」
「何だと!?坂本殿を暗殺した、新選組の副長か!」

坂本殿と言っていたので、恐らくだが土佐藩の兵みたいだ。
彼らは手にしていた銃を構え、土方さんへと発砲しようとしていた。

だが、土方さんの動きの方が早かった。
彼は羅刹の力を解放させて、刀を素早く抜くと猛然と敵兵へと斬りかかる。

「ぐぁっ……!」
「がふっ……!」

いつ斬り込んだのか分からないほどの速度で、土方さんは二人を斬り捨ててしまう。

「……運が悪かったな。今の俺は、ちょうど虫の居所が悪いんだ」

状況の異常に気がついたのか、いつの間にか離れた所に敵兵が集まっていた。
そして敵兵は一斉にこちらへと銃を撃ってきて、銃声が森にこだまする。

「ぐっ……!」
「っ、土方さん!!」

銃弾の何発かが土方さんに命中していた。
じわりと彼の黒い洋装が赤い血に染まっていたが、羅刹の力を持った彼の身体は意図も簡単に銃創を消し去ってしまう。

「これが、銃の痛みか。思ったよりどうってことねえな。……そうだ、何てことねえよ。あの人がこれから受ける痛みに比べたら、全然なぁっ!!」

凄まじい速さで土方さんは敵兵へと走ると、悲しみと怒りが混じった表情で刀を振るう。
胸の中のやりきれない無念をまるでぶつけるように、ひたすら彼は刀を振るって、敵を斬り伏せていった。

そんな彼を見ていた私は、動けなくなっていた。
辺りに漂う彼から発せられた殺気に、息がつまる感覚があったが、直ぐに正気に戻る。
彼は今、羅刹の力を使っているという事を思い出して……。

「土方さん!駄目です、羅刹の力を使ったら!」
「うるせえ、黙ってろ!!」

鬼迫迫る声が、私の言葉をはねつけた。
木々の間を飛び移り、白刃を振るっている彼の姿はまさしく悪鬼羅刹そのもの。

土方さんは全身に返り血をあびながら、それでもまだ何かが足りないと言わんばかりに敵兵を斬り続ける。
そんな彼の姿を、島田さんは冷や汗を流しながら見入っていた。

「……土方さん」

そして、全ての敵を斬り終えると森には静寂が戻ってきた。
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