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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


何度も何度も、後ろ髪引かれる思いで長岡邸を振り返る。
引き返したい気持ちが大きく膨れ上がり、立ち止まりたくもなったけど、土方さんはどんどん先へと進んでいた。

「そこかしこに敵がいやがるな。まとまって動くと、すぐに見つけられちまう。手分けして進むぞ。島田、それと雪村妹。おまえらは俺と一緒に来い」
「あ、はい……」
「承知しました!」
「相馬は、雪村姉と行け。……守れよ、必ず」
「はい!」

敵に見つからない為ならば、二手に別れた方がいいのは分かるけれども、私はどうしても千鶴と離れるのが不安だった。
何故か分からないけれども、嫌な予感がして千鶴の方を振り返る。

相馬君が一緒なら大丈夫。
そう思っているけれども、何故か胸にはざわざわとした不安が押し寄せてきている。

「千尋、私なら大丈夫だから。相馬君と一緒だから」

不安そうなのが表情に出ていたのだろう。
千鶴は私の手を優しく握りながら、安心させるように微笑みを浮かべていた。

「……後で、絶対に会おうね」
「うん、絶対に会おうね」
「……相馬君。千鶴の事をお願いね」
「お任せください。この相馬主計、命を代えてでもお守りしますから」
「……うん」

そして、私たちは二手に分かれて市川を目指すことになった。
違う道から向かっていく千鶴と相馬君の後ろ姿を見送ってから、私は不安を抱きながら土方さんの背中を追いかける。

市川に向かう森の中、私たちはひたすら走り続ける。
そんな中、土方さんは速度を緩めることなく走り続けていた。

(……足が、少し痛い)

森の中は足場も悪いせいで、痛みを感じるようになってきた。
それでもなんとか走っていると、前を走っていた島田さんが振り返る。

「雪村君、大丈夫ですか?何なら、俺がおぶって行きましょうか」
「いえ、大丈夫です……、走れますので。お気遣い、ありがとうございます」

大きく息を吐きながら、また走り続ける。
先を走っている土方さんは先程から一言も発する事も無く、ただ走り続けていた。
それが余計に彼の心の痛みを感じさせる。

そして日が西へと傾き、辺りが暗くなってきた頃だ。

「おい、そこの者たち、止まれ!どこへ向かうつもりだ?」

様式の軍服をまとった兵士たちが、私たちを呼び止めた。
敵側の人間だと分かり、じわりと嫌な汗が背中に浮かぶのが分かる。
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