第3章 巡察【共通物語】
「おまえ達の正体を知っているのは、この八木邸に寝起きしてる奴だけだ。前川邸からこっちに来る奴らには気をつけろ。いいな」
「わかりました、これからは気をつけます。ところで……今の方は?」
「武田観柳斎と、名乗っていましたけど……」
なんとも執拗い人であり、人を小馬鹿にしてくるような嫌な感じの人だった。
沖田さんより苦手な人かもしれない。
「あいつか……五番組組長の武田観柳斎って奴だ。腕はそこそこだが、文学だな軍学の多少の知識を持ってる奴だ」
「軍学……」
「抜け目のない奴だからな……気をつけろ」
「はい」
「わかりました」
「それから、用がないならおまえ達もこの辺でうろうろしてないで部屋に戻っていろ」
土方さんは面倒事がおきるまえにと、私たちを部屋に戻そうとしているのだろう。
でも、せっかく土方さんに会えたのだからこのまま帰る訳にはいかない。
「あの、土方さん。私たち、土方さんにお願いがあってここまで来てたんです」
「俺にお願い?」
「はい。なにもしないで部屋に籠っているのは、皆さんに申し訳なくて……。何かお手伝いさせてもらえませんか?掃除でも洗濯でもなんでもやります!」
私と千鶴の言葉に土方さんは何かを感じたのか、少しの間考えた様子を見せる。
「部屋に籠っているのは、そんなに退屈か?」
「それはその……多少は……」
「はい、退屈です」
「雪村の妹の方は、はっきり言うな……。分かった。源さんに伝えておくから後で指示を仰げ」
「本当ですか?」
「その代わり、あまり外から来た奴と関わるんじゃねぇぞ。いいな」
「わかりました。あの……ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
土方さんに頭を下げてお礼を言い、頭を上げた時だった。
彼はため息を吐きながら私の事を見ながら、面倒くさそうに私を呼んだ。
「あと、雪村妹」
「はい?」
「あまり、知らない隊士と鉢合わせしたからって言って警戒と威嚇ばかりするんじゃねぇ。面倒事になるから、適当に通り過ぎたり相手にするな。分かったな」
「は、はい……わかりました……。気をつけます」
威嚇をするな、と言われてしまったがそれは私にとっては必要な事なのだ。
千鶴を守るには、警戒して威嚇して守らなければならない。
だってここの人達は全員【信用出来ない】から。