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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


こんなにも声を荒らげて叫ぶ姿は、珍しくて驚いてしまった。

「奴らが俺たちを恨んでねえはずがねえ!すぐに気付かれて、捕えられるに決まってるだろう!」
「……仮に捕まってしまったとしたも、俺はもう、大名の位をもらってるんだぞ?そう簡単に殺されはしないさ」
「あんたは、甘いんだよ!幕府からもらった身分なんて、奴らにゃ毛ほどの価値もねえ!殺されちまうのがわかってるのに、みすみす行かせられるはずがねえじゃねえか!」

土方さんは叫びながらも、必死に説得をしようとしていた。
だけど近藤さんは表情を変えずに、彼の説得に頷こうとはしない。

近藤さんは、一種の冷徹さえさえ感じる瞳を土方さんに向けていた。
こんな冷たい目をしている近藤さんは初めてで、戸惑っていれば彼は土方さんに言葉を投げる。

「……おまえが何を言っても無駄だ。もう、決めてしまったことだからな」

京からずっと、新選組の人たちとは行動を共にしてきた。
でも今まで二人がこんなやり取りするのは見た事もなくて、言葉が出ない。

何時もは、冷静沈着な土方さんが激情化な近藤さんをたしなめる。
それが何時もの二人の姿だったはずなのに、今はそれが真逆となってしまっていた。

「ふざけんじゃねえ!大将のあんたがいなくて、何が新選組だ!俺は、あんたを引きずってでも、連れて行くからな!今更逃げ出すなんて、許すもんかよ!あんたの命はもう、あんた一人のものじゃねえんだ!」

あんなにも冷静なはずの土方さんが、涙を溜め込めて近藤さんに掴みかかりかねない勢いで絶叫する。
だけど近藤さんは、土方さんの剣幕を凌駕する勢いで命令を下した。

「ならば、これは命令だ!島田君と千尋君、そして千鶴君たちを連れて市川の隊と合流せよ!」

近藤さんの剣幕に土方さんは目を見開かせた。

「……俺に命令するのか、あんたが。なに、似合わねえ真似してんだよ」

かろうじて、土方さんは涙を堪えていた。
だけども声は涙が含んで震えている。

「局長の命令は、絶対なんだろう。隊士たちに切腹や羅刹化を命じておいて、自分たちだけは特別扱いか?……それが、俺たちの望んだ武士の姿か」

近藤さんのその一言で土方さんは黙り込んでしまう。
そんな時、ふすまが勢いよく開いて、野村君と相馬君と千鶴が中に入ってきた。

「局長、今の話は本当ですか!?奴らの元に向かうって!?」
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