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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


「……すぐ、逃げる準備をしてくれ。ここは、敵に囲まれてる」
「え……」

土方さんの言葉に、私と近藤さんは目を見開かせた。
敵に囲まれているなんて、そんなの全く気付くことが出来なかった。

「敵兵は、二、三百はいます。奴らに気付かれないよう、裏口からここに入ってきました」
「せめて、桁が一つ少なきゃ、どうにかできたんだがな」

土方さんは唇を噛むと、忌々しそうに窓の外を見やる。
それに釣られるように窓を外を見れば、建物を囲むように洋装をした敵兵が大人数いた。

いつの間にこんなにも集まっていたんだろう。
そう思いながら、私は目を見開かせながら窓の外の光景を見つめる。
そしてすぐに、外には千鶴と相馬君がいた事を思い出す。

「千鶴と相馬君は!?」
「彼らなら先程、状況を伝えて建物の中に入ってもらっています。あとからこちらに来ると思います」

島田さんの言葉に安堵していれば、土方さんは険しい表情をしながら窓の外を見ていた。

「今からじゃ、斎藤たちを呼び戻す時間もねえ。……俺が何とかするしかなさそうだな。島田、それから雪村。近藤さんを連れて先に逃げてくれ」
「そんな……!?いくら土方さんでも……今は昼間なんですよ!?体調だって良くないのに」
「そんなの、やってみなきゃわかんねえだろ!」
「しかし、相手は銃を主体とした部隊です」

島田さんと私は、今にも飛び出して行きそうな土方さんをなんとか抑えて説得しようとしていた。
そんな時、今まで沈黙していた近藤さんが決意を決めたような表情を浮かべる。

「……待ってくれ。トシがそこまでする必要はない。俺が、向こうの本陣へ行くよ」
「何を言ってやがる!みすみす死ににいくようなものじゃねえか」
「もちろん、新選組の近藤だとは名乗らんよ。偽名を使って、別人に成りすますつもりだ。俺たちは旗本で、この辺りを警備している鎮圧部隊だと言えばごまかせるだろう。おまえたちが逃げる時間くらい、稼げるはずだ」

近藤さんの言葉に、私と島田さんは目を見開かせて言葉を失ってしまった。
確かに一時の時間は稼げるかもしれないけど、もし近藤さんだとばれたら……。
そう思っていれば、土方さんだけが声を荒らげながら叫んだ。

「馬鹿か、あんたは!あいつらがそんな甘い連中だと思ってんのか!?京で、散々見てきたじゃねえか!」
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