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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


「……かなわねえな、本当に」
「え、え?なんで……笑って」
「いや、おまえも江戸の女なんだな、って思ってよ」

彼の言葉に私は目を見開かせて何度か瞬きをする。

「……前に、話したっけか。俺は、多摩の百姓の家の末っ子でな。親父もお袋もわりと早くに亡くなっちまったから、四つ上の姉貴に面倒見てもらってたんだ。その姉貴の喋り方が、おまえに少し似ててな。……総司の姉のミツさんも、同じような感じだったな」

そういえば、だいぶ前に同じようなことを言われた。
私は土方さんのお姉さんに似ていると、喋り方や叱り方が似ているから困ると。

「身内に叱られてるみたいで、言うことを聞かなきゃならねえような気にさせられちまう」
「そう、なんですね……」

私はそんなに似ているのだろうか。
少しだけ不思議な気分になりながらも、土方さんの顔を見つめれば、彼と視線が合う。

「……あの天霧とかいう鬼が言ってた通りなら、羅刹の力を使わなきゃ寿命が縮んだりしねえってことだろ?本当にどうしようもねえくらい辛くなったら、そう言うさ。だから、心配するな」
「……信じても、良いんですか?」

私はついそう聞いてしまった。
彼は何時も『休む』と言っては休まなかったり、私の言うことを中々聞いてくれない。
本当に辛くなったら言ってくれるのだろうか。

土方さんは強い方だ。
多少の辛さだって、自分の中に抱え込んで言ってはくれない人。
本当に言ってくれるのかという私の不安に気が付いたのか、土方さんは困ったように笑った。

「信じてくれて大丈夫だ」
「じゃあ、約束してください。辛くなったら、ちゃんと言うって……自分で抱え込まないって」
「ああ、約束してやるよ。だから、お前も約束しろ」
「私もですか?」
「お前も辛くなったら吐き出せ。さっきみたいに、辛かったってな。お前も人の事言えねえからな……自分の中に抱え込んでるだろう」

見透かされたような言葉に、私はつい俯いてしまう。
私は土方さんのことを言えないかもしれないと思い、つい苦笑を浮かべてしまった。

「じゃあ、小指出してください」
「小指?」
「約束するんですから……。今、私は刀を持ってないから甲府のように出来ないので」

そう言いながら、私は小指を土方さんへと差し出す。
すると土方さんは呆れたような、なんとも言えない表情をして笑っていた。
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