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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


自嘲気味に笑う土方さんに、私は何も言えなくなってしまった。
まるで自分自身を責めているような彼は、笑みを消してから呟く。

「……にしても、新選組も人がずいぶん減って……、様変わりしちまったな」

人の上に立つ彼の苦労は私には簡単に想像は出来ない。
毎晩毎晩、東の空が明るくなるまで夜更かしをして寝る間も惜しんで働き続ける。
そして羅刹となった身では昼間起きていることすら、辛いはず。
なのに土方さんは連日、幕府の方々との会談を重ねていた。

このままでは、土方さんの身は持たない。
寝る間も惜しんで、苦痛を味やっているはずなのにそれでも昼間まで働いている。
いつか身体を壊してしまう。

「もう、やめてください」
「やめろってのは、どういう意味だ?」
「分かりませんか?貴方がさっき、山南さんに仰ってた意味と同じことです。やむ得ない時を除いて、羅刹の力を使うのは辞めてください」
「なんで、おまえにそんなことを指図されなきゃいけねえんだ?」

土方さんの目と声色は厳しいものだった。
不機嫌を滲み出している表情に、私は怯える事無く彼を睨みつけるように見上げる。

「貴方が、羅刹になったのは私のせいです。あの時、風間に会わなければ貴方は今でも普通の人間でいる事ができた。そしたら、そしたらこんな……」

声が徐々に震えていく。
最後は言葉が出てこなくて、つい唇を噛み締めていれば土方さんが小さくため息を吐いたのが聞こえた。

「……前に、言わなかったか?俺は俺の意志で、変若水を飲んだんだ。誰に強制されたわけでもねえ」
「その言葉が、どれだけ辛くなるのか……わかってますか?貴方のその言葉が」

目尻に涙が浮かぶのが分かった。
前にも彼は『自分の意志で飲んだ』そう言ってくれたけれど、それが余計に私を苦しめていく。
その優しさがとても辛かった。

私のせいで変若水を飲んで、人としての生活を手放してしまった。
昼間は苦痛が起きるはずなのに、『辛い』とも言わずに働き続けている。
まだ『お前のせいで』と言ってくれた方が楽だ。

「辛いなら辛いって言ってください。羅刹になりたくなかったって、罵倒してもいいから……本当の気持ちを言ってくださいよ……」

私の言葉を静かに聞いていたかと思えば、突然土方さんは吹き出した。
それに驚いて目を見開かせていれば、彼は小さく微笑んでいた。
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