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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第11章 乞い求む【土方歳三編】


山南さんは暫く俯いていたけれども、顔面蒼白になったまま顔を上げて土方さんを真っ直ぐに見つめた。

「……でしたら尚更、研究を進めるべきでしょう。研究を続ければ、その欠点を補う方法も見つかるかもしれない。……それは、羅刹となった君の為にも、必要なことのはずです」
「副長命令だ。羅刹の研究は中止してくれ。もちろん、部隊の増強もなしだ」

土方さんの言葉を聞いた山南さんは、無言のままで暫く彼の顔を睨みつけていた。
だけど、やがて黙っていた平助君が山南さんへと声をかける。

「山南さん、行こうぜ」

声をかけられた山南さんは、暫く俯いたままだった。
だけどやがて、顔をゆっくりと上げてから静かに瞼を閉じてから返事をする。

「……わかりました」

そうして、山南さんは平助君と共に部屋を出ようとした時だった。

「あれ、近藤さん。こんな所で何してるんだ?それに千鶴まで」
「いや……、ちょっと散歩に出ようと思ってな。それでたまたま千鶴君とここを通りかかっただけだ。気にしないでくれ」
「……千鶴と、近藤さん?」

ふすまの向こうで、近藤さんが小さく笑っているのが見えた。
だけど千鶴の顔が見えた時、彼女の瞳は驚愕の色で染め上げられたいたのに気が付く。

その瞳は部屋の中にいる相馬君に向けられていて、相馬君もそれに気がついて目を見開かせていた。
だけどやがて、千鶴は近藤さんたち共にその場を去っていき、部屋には沈黙が流れ続ける。

「……俺も、失礼します」

相馬君は勢いよく立ち上がると、まるで千鶴を追いかけるように部屋を出ていった。
そして彼が居なくなると、部屋には私と土方さんの二人だけとなる。

「……お茶、冷めてしまったので淹れ直してきますね」
「いや、喉が渇いているからな、これくらいがちょうどいい」

そう言って、土方さんはすっかり冷めてしまったお茶に口をつける。
激務続きのせいなのか、土方さんからは覇気が全く感じられなかった。

(激務続きなのもあるけど、永倉さんたちの事もあるはずだよね……)

彼の覇気の無い表情に、眉を思わず下げながら畳へと視線を落とすと、彼は小さく呟いた。

「……新八と原田の足抜けは相当の痛手、か。正論だよな。返す言葉もねえや。まあ、いずれこうなるだろうってのは覚悟してたし……、あの二人に夢を見せてやれなかったのは俺たちの落ち度だ」
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